2022 Fiscal Year Research-status Report
早産減少を目指した新規管理法の検討~生体内水素産生能と免疫細胞Th17の関わり~
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21K16812
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今井 健史 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20778295)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 早産 / サイトカイン / 分子状水素 / 腸内細菌叢 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
早産および胎児期に感染/炎症に曝された児は、脳性麻痺や慢性肺疾患など長期予後に大きな影響を及ぼすことが知られており、世界的な問題である。早産の予防や発症予測する試みは社会的要請度の高い課題である。研究代表者らは兼ねてより早産や胎児脳障害に関する病態および炎症性サイトカインの関わりなどを研究してきた。これら知見をもとに、近年では分子状水素が抗酸化作用や抗炎症作用を有すること、分子量が小さいため拡散により胎盤や脳血液関門を容易に通過できる特性を持つことに注目し、妊娠予後の改善を図る新規管理法としての、生体内における生理的な分子状水素産生量が妊娠予後に与える影響、ならびに、経母体的分子状水素投与の有用性について研究している。胎児は母体にとって半異物であり、正常な妊娠維持には適切な免疫寛容が必須である。免疫寛容の一端として、CD4陽性T細胞のsubtypeであるTh17およびTregの適切なバランスが重要とされる。早産を含めたさまざまな疾病発症に関わるとされる腸内細菌叢はこれらTh17/Tregの分化誘導にも大きな影響を与える。また、腸内細菌叢は生体内における唯一の分子状水素産生源でもある。つまり、Th17/Treg、腸内細菌叢、分子状水素は互いに密接な関係にある。一方で、生理的に産生される分子状水素の生体内での役割、特にヒト妊婦における役割は未だ解明されていない。本研究の目的は分子状水素がヒトの妊娠免疫寛容にもたらす影響の検討およびヒト妊婦への分子状水素投与を実践に移すことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3-4年度に予定していた実験ならびに仮説の検証は順調に遂行し得た。 具体的には; 1)実験動物を用いた解析:Tcell活性化物質であるantiCD3投与の早産モデルマウスにおいて、飽和水素水の強制飲水および自由飲水の併用が早産予防効果を有すること、子宮におけるCOX2発現や脾臓における各種炎症惹起性サイトカインの抑制効果を有するとの結果が得られた。一方で、antiCD3投与と同時に分子状水素を投与する治療効果の検証においては有意な差を示せなかった。同じく、分子状水素はプロゲステロン拮抗薬による早産は予防し得なかった。FCMにて子宮筋層よりCD4陽性細胞を回収しRNAseq解析を実施したが、意義ある結果を見出せなかった。 2)ヒト検体・情報を用いた解析:満期帝王切開症例を対象に無菌的にヒト羊膜・絨毛脱落膜を回収し組織培養。リコンビナントIL-26添加よりTNF-α、IL-6等のサイトカイン発現の有意な上昇を確認できた。健常人の末梢血単核球細胞を用いた実験においては予定していたTh17、Tregに加えてTh1細胞もFCMにて分離回収。antiCD3存在下に抗原提示細胞と共培養。分子状水素添加はTregの分化誘導に影響を与えることなく、Th17やTh1といったeffector T細胞を抑制する働きを有するとの結果を得た。なお、当初の計画どおりにTh17はCD3+,CD4+,CCR6+,CXCR3-分画、Th1はCD3+,CD4+,IFNγ+分画を持って、TregはCD3+,CD4+,Foxp3+分画を持って定義し、Th17のeffector化はIL26+orIL22+を、Tregのeffector化はFoxp3+hi&CD45RA-を持って定義した。ヒト妊婦糞便回収ならびに同妊婦における生体内水素濃度測定は現在サンプル回収中にある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の仮説・推察のとおり分子状水素がeffector T細胞に抑制的に働いて早産予防効果を発揮する可能性があること、ならびに、その機序として免疫代謝への影響が示唆される結果を得た。次年度の研究では、引き続き免疫細胞や早産発生減少がどのような作用機序の元に起きるのかについてさらなる解明に着手する。また、引き続きヒト妊婦糞便/膣分泌物の回収ならびに16srRNA解析を実施し、ヒト腸内/膣内細菌叢と生体内H2濃度、Th17/Tregの関連を検討する。ヒト妊婦への分子状水素投与(臨床介入研究)についても鋭意準備中である。
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Research Products
(2 results)