2021 Fiscal Year Research-status Report
NRF2持続活性化による還元ストレスがもたらす小胞体ストレスと感音難聴の病態解明
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21K16838
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岸野 明洋 東北大学, 加齢医学研究所, 分野研究員 (80825307)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | NRF2 / ミトコンドリア膜電位 / 硫黄代謝 / シスチン / システインパースルフィド / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
NRF2はシスチントランスポーターや、グルタチオン合成酵素などのイオウ代謝関連因子を統括的に制御しており、細胞内へのシステイン供給において重要な役割を果たしている。システインのチオール基に硫黄原子が付加されたシステインパースルフィドは高い求核性を持ち、活性酸素種を効率的に消去することによって強い抗酸化作用を発揮する。一方で、システインパースルフィドはミトコンドリア膜電位の形成を介してエネルギー代謝にも貢献する。ミトコンドリアに対するNRF2の実質的な影響はこれまでにも報告されているが、NRF2がミトコンドリア機能をどのように増強するかについての正確なメカニズムはまだ解明されていない。研究開始時当初は、オートファジー機能障害によって誘導されるNRF2持続活性化がもたらす還元ストレスと小胞体ストレスの関連性について予定していた。しかし、ミトコンドリア硫黄酸化経路を解析するにつれて、NRF2の硫黄代謝制御によるミトコンドリア機能増強のメカニズムが明らかになりつつあった。そこで、本研究ではさらにその検討をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NRF2は、シスチントランスポーターxCTをコードするSLC7A11の発現の活性化を介してシスチン取り込みの増強に寄与するのみでなく、sulfide quinone oxidoreductase(SQOR)の発現を直接活性化することによって、硫化物からミトコンドリアの電子伝達系に電子を供給し、ミトコンドリア機能の増強に貢献することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
グルタチオン合成とミトコンドリア電子伝達系に供給される硫化物との関係性を解析することによって硫黄代謝を介したNRF2のミトコンドリア機能への関与の検証を深める。
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Causes of Carryover |
現在までの研究が順調に進んでいるため当初の予定額よりも少額の支出に留まった。次年度以降は、より多くの条件設定を追加し、様々な病態を想定して実験を進める。また、本研究の成果を学会で示すための学会経費および論文投稿の経費として用いる。
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