2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来網膜神経節細胞におけるミトコンドリア機能障害の検討
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21K16865
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 航 東北大学, 大学病院, 助教 (20646442)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 視神経委縮 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で使用している常染色体視神経委縮症患者由来iPS細胞(ADOA1-iPSC)においてはOPA1遺伝子のフレームシフト変異である13delGGTAAGGGTTGCAAを認めている。この遺伝子変異に対してCrispr/cas9の技術を用いてゲノム編集を施行した。遺伝子変異のある配列の前後でgRNAを決定し、T7E1 assayの結果から最も切断効率の良いgRNAを選択した。ノックイン用のベクターと共にADOA1-iPSCに遺伝子導入し、DNAシークエンス解析で遺伝子変異の修復が確認された株をマスターストックとして冷凍保存した。さらにこの遺伝子編集したADOA1-iPSCから既報に基づいて3次元人工的立体網膜組織へ分化誘導した。分化誘導中の網膜神経節細胞発生過程における数や位置に関して、正常人コントロール、ADOA1、遺伝子編集したADOA1由来網膜組織で有意な差を認めなかった。また立体網膜組織の形状に関しても有意な違いを認めなかった。この3群間で神経培養を施行したところ、ADOA1群と比較して遺伝子編集したADOA1群で有意に神経突起の密度が大きかった。神経中のミトコンドリアの脱分極を調べたところ、ADOA1群と比較して遺伝子編集したADOA1群で有意に脱分極したミトコンドリアが少なくなっていた。また立体網膜組織から網膜神経節細胞を単離し、培養したところこちらもADOA1群と比較して遺伝子編集したADOA1群で有意に細胞生存率が高かった。本研究からOPA1遺伝子がADOA1の直接的な原因であることが示され、遺伝子治療により病態が改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
常染色体優性視神経委縮症患者由来のiPS細胞に関しては、樹立から分化誘導、ゲノム編集での遺伝子変異の修復など順調に進んでいる。しかし同様にミトコンドリアが原因の視神経委縮を認めるレーベル視神経症の患者由来のiPS細胞の樹立がコロナウイルス感染症の蔓延及び停滞により病院への通院が出来ず遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
常染色体優性視神経委縮症患者由来のiPS細胞に関しては光学顕微鏡により網膜神経節細胞および神経突起内のミトコンドリアの形態について観察を行う。またOPA遺伝子の局在についても蛍光標識を行い、分布を確認する。レーベル視神経症患者由来iPS細胞作製に関してはコロナウイルス感染症が減少したタイミングでiPS細胞の樹立を行い、同様に3次元人工的立体網膜組織へ分化誘導することでミトコンドリア変異の違いによる神経委縮を比較検討する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染流行に伴う出勤制限や在庫不足等による影響 次年度に試薬費として使用する
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