2022 Fiscal Year Research-status Report
網膜色素変性における抗網膜抗体の解析と病態修飾の解明
Project/Area Number |
21K16889
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 孝幸 北海道大学, 大学病院, 医員 (40793633)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 網膜色素変性 / 抗網膜抗体 / 自己免疫性網膜症 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性網膜変性疾患である網膜色素変性(retinitis pigmentosa; RP)は、網膜に発現する分子の遺伝子異常によって視細胞が障害される疾患群であり、進行性の夜盲、求心性視野狭窄、 視力低下を主徴とする。一般的にRPは視細胞のうち明暗の区別に働く桿体細胞に関わる遺伝子の異常によって機能障害を引き起こし、広範な桿体細胞死に至ることで発症する。しかし、主に網膜中心部に分布し、色の区別に働く錐体細胞にも機能障害が及び、中心視力が障害される機序は明らかにされていない。また、視力低下や歪視の原因となる嚢胞様黄斑浮腫の合併は、炭酸脱水酵素阻害薬やステロイド薬による治療が行われるが、治療反応性は症例によって異なるため、複合的な発症機序が推察されている。 抗網膜抗体は網膜に対する自己抗体の総称であり、抗網膜抗体を原因とする網膜症は自己免疫性網膜症と呼ばれる。抗網膜抗体の標的分子はさまざま報告されているが、本研究では、RPの病態にそれらの多様な抗網膜抗体が病態修飾している可能性を推測し、RP患者における臨床像と抗網膜抗体の関連を検討することを目的とする。これまでに自己免疫性網膜症で関与が報告されている抗網膜抗体の標的分子について網羅的に解析し、検出された抗網膜抗体の種類とRPの臨床像との関連を明らかにする。 本研究は、学内倫理審査委員会に承認され、すでに開始している。対象となる網膜色素変性患者および対照群の患者より血液検体を採取し、ウエスタンブロット解析による抗網膜抗体の調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学内倫理審査委員会に承認され、本研究を開始した。対象となる網膜色素変性患者および対照群の患者より血液検体を採取している。本研究について同意を得たRPおよび対照群の患者より血液検体を採取し、ウエスタンブロット解析で血清中の抗網膜抗体を検索する。陽性となった抗網膜抗体と臨床像を比較検討する。 ウエスタンブロット解析で調査する抗網膜抗体の標的分子は以下の通りである。Recoverin、Carbonicanhydrase 2(CA2)、α-Enolase、Aldolase C、Pyruvate kinase M2(PKM2)、Transient receptor potential cation channel subfamily M member 1(TRPM1) 、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)、Cellular retinaldehyde-binding protein (CRALBP)、Arrestin、Heat shock protein 60 (HSP60)、HSP27、Collapsin response mediator protein 5 (CRMP5)。 RP患者の検体は順調に集まっており、解析も進んでいる。一方で対照群は、検体採取と解析がやや遅れている。全体的にはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、検体採取とウエスタンブロット解析をすすめる。解析結果をもとに臨床像との比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
理由:対照群の検体採取と解析がやや遅れていることから、recombinant proteinおよび陽性コントロールとなる抗体、その他物品などがあまり消費されておらず、研究費が低額となった。 使用計画:令和5年度は、引き続き検体採取と解析をすすめていく。検体採取と解析が順調に進むことで、物品購入費が増えるため、それに対して次年度使用額分の研究費があてられる予定である。
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