2021 Fiscal Year Research-status Report
上皮細胞-樹状細胞の連携による上皮細胞間バリア構築と歯周病への応用
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21K16935
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
池崎 晶二郎 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (00849276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周病 / 付着上皮 / セマフォリン / Rhoシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は口腔内に常在する歯周病原菌によって引き起こされる炎症性病変である。歯を支持する歯周組織(歯肉, 歯根膜, 歯槽骨)に対する病的変化がおき、不可逆的な歯周組織の破壊によって歯を喪失する原因となる。歯肉上皮のうち、エナメル質に面した付着上皮は病態進行に対するバリアとして重要な役割をもつ部位である。他の歯肉上皮と比較して付着上皮は細胞間隙が広く開大し、ターンオーバーのサイクルが早く、この特徴が病原菌の侵襲に対する防御機構の一つとして重要な役割を担っていると考えられる。しかし、付着上皮において細胞が細胞間接着装置を維持するメカニズムについて不明な点は多い。 セマフォリン(Sema) は神経軸索ガイダンス因子として知られる分子であり、神経系以外に消化器系, 免疫系の細胞にも発現しアトピー性皮膚炎や多発性硬化症などの疾患と関連することが知られている。我々のグループでは付着上皮の由来となるエナメル上皮細胞にSema4A, 4Dが発現していること、Sema4Dのシグナルが細胞の接着と分化を制御していることを明らかにしてきた。 本研究は、これまでの成果を発展させ、上皮細胞に加え樹状細胞におけるSema4Aの発現が細胞間接着に与える影響を調べることで,歯周組織の恒常性とバリア機能の構築における、上皮-免疫担当細胞連携の役割を明らかにすることを目標とする。本年度はマウス歯肉溝底部に存在する付着上皮の細胞株を樹立し、セマフォリンおよびその受容体の発現を確認した。また、付着上皮細胞株とマウス樹状細胞の共培養が上皮細胞の形成する上皮バリアに及ぼす影響についての解析を現在行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、マウス付着上皮細胞株の樹立と細胞間接着装置バリア機能の評価を主に行った。樹立した細胞株は、付着上皮において特徴的に発現していることがわかっている複数の分子を有意に発現し、ハイドロキシアパタイトへの接着能があることがわかった。 現在は、マウス骨髄細胞より分化誘導した樹状細胞と付着上皮細胞株の共培養により、付着上皮細胞間接着や抗菌因子の分泌などの上皮バリア機能に起こる変化について免疫細胞染色およびRT-qPCR, Western blottingで解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、上皮バリア機能を向上させる分子としてセマフォリン等をターゲットにした実験を中心に行なっていく。 具体的には、付着上皮細胞が自己分泌または周辺細胞からの傍分泌に由来するセマフォリンによりRhoシグナルが活性化し上皮バリアを向上させるメカニズムを明らかにする。マウス付着上皮細胞と樹状細胞との共培養条件におけるRhoの活性を単培養の条件と比較する。Rhoシグナルの活性がセマフォリンによるものであることを確認するために、セマフォリン受容体をsiRNAを用いてノックダウンした付着上皮細胞を用いて培養を行い、上皮バリア機能の評価を行う。 得られた研究成果をまとめ、関連学会での報告および学術論文の作成を目標とする。
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Causes of Carryover |
申請中の研究計画を遂行するなかで、本年度実施予定の計画の一部を次年度へ移行したために次年度使用額が生じました。具体的には、バリア構築の評価の一つとして経上皮電気抵抗測定による評価については次年度に実施するものとして計画を見直したため、翌年分の助成金と合わせて研究費として使用する計画です。
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