2022 Fiscal Year Research-status Report
抗癌剤誘導性口腔粘膜炎における獲得免疫機構に着目した新規治療法の開発
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21K16940
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西井 慧美 順天堂大学, 医学部, 助教 (00848674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / 制御性T細胞 / CD4T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌治療として広範に使用される抗癌剤は、治療有効域と副作用域の用量が接近しており、安全に治療を進めるためには、副作用に対する早期対応が重要である。なかでも、化学療法に伴う口内炎は、激しい痛みが患者の摂食意欲を低下させ、栄養状態だけでなく、治療意欲にも強く影響を与える重大な有害事象である。頭頸部癌、消化器癌等の種々の固形癌に対して広く使用されているFluorouracil(5-FU)を用いた化学療法では、約30%の患者に口腔粘膜炎が生じることが報告されている(Sonia Amin Thomas, Cancer Cell&Micro environment, 2016)。 抗癌剤は、増殖の活発な上皮細胞に作用して再生を阻害するため、些細な物理的ダメージによっても上皮細胞のバリア構造が破壊される。多くの動物モデルを用いた研究結果は、損傷を受けた上皮細胞や損傷に伴い炎症部にリクルートする自然免疫細胞が、炎症惹起における主たる役割をしていることを示しているが、一方で、炎症抑制/組織修復機構については明確ではない(Stephan T. Sonis et al. Supportive Oncology, 2007)。我々は、5-FU誘導性口腔粘膜炎マウスモデルを樹立(Nishii et al. 2020)し、解析する中で、粘膜炎部には、CD4T細胞サブセットの内、炎症抑制に働く制御性T細胞(regulatory T; Treg)が多く集積していることを明らかにした。Tregを抗CD25抗体投与により除去すると、粘膜炎症が劇的に悪化したことから、Tregが炎症抑制/組織修復に重要な役割をしていることが示唆されている。本年は、上記の抗癌剤誘導性口腔粘膜炎症に加えて、歯周病が神経変性疾患に与える影響の研究に着手するよう準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年に出産し、今までよりも研究に従事する時間が減ったことが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の樹立した5-FU誘導性口腔粘膜炎マウスモデルを用いて、野生型マウスおよびIFN-gamma欠損マウスのそれぞれから、口腔粘膜炎部に集積するTregを単離し、RNAシークエンス解析を行う。IFN-gamma欠損マウスの粘膜炎部に集積するTregに特徴的な遺伝子発現を見いだすことで、これらのTregサブセットの性状を網羅的に解析する。また、Tregの性状を変化させる因子が、炎症部で産生されるIFN-gammaであることを実証するため、抗IFN-gamma抗体を粘膜炎部に局所投与し、IFN-gamma欠損マウスの粘膜炎部に集積するTregと同じ表現系をもつTregが誘導されるかを解析する。
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