2021 Fiscal Year Research-status Report
天然由来レクチンを用いた唾液アミラーゼ糖結合性の探索と解明
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21K16946
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊東 有希 (信田有希) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80771162)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 天然由来レクチン / 唾液アミラーゼ / 糖結合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔バイオフィルム感染症を惹起する口腔細菌が,糖尿病や誤嚥性肺炎などの全身疾患の病態に悪影響を及ぼすことは既知の事実である。また,超高齢社会に突入した我が国では,認知機能の低下などに起因する要介護高齢者の増加が危惧される。日常動作能力の低下した要介護高齢者の口腔内には多量の口腔バイオフィルムが蓄積することにより,前述のような全身疾患の発症数が増加し,今後の医療費の更なる増大が懸念される。現在,病院や介護施設などの医療現場における要介護高齢者の口腔衛生管理は,医療従事者により実施されているが,医療現場のマンパワー不足と費やせる時間の制約などにより,決して万全とは言えない状況にある。つまり,現在実施されている歯磨きなどの口腔衛生管理に代わる,新たな口腔バイオフィルム感染症対策が急務である。 このような背景から,申請者らはこれまで口腔細菌の歯面への初期付着を阻害する天然由来レクチンに着目し,口腔バイオフィルム形成の制御を目指してきた。本研究では,ペリクル中で細菌が結合するレセプターとしても機能する唾液アミラーゼの糖結合性に着目するとともに,アミラーゼ糖鎖に結合する天然レクチンを探索することで,天然由来レクチンが口腔細菌の歯面への初期付着抑制だけでなく,バイオフィルム形成における増悪因子の排除に対しても有効かどうかを調べることを目的としている。 上記目的のため,現在は唾液アミラーゼに結合する天然由来レクチンの網羅的探索および至適濃度の決定を実施しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である令和3年度は,唾液アミラーゼ糖鎖に結合する天然由来レクチンの網羅的探索が主な目標であった。この網羅的探索はELISA法を用いて検討しており,現在は至適濃度を検討している段階である。実施しているELISA法においては,研究開始当初,唾液アミラーゼやレクチンの濃度設定,および使用試薬の選択などに苦慮していたが,ようやく実験条件設定が確立でき,網羅的探索が実現できた。主目的を達成できたことから,概ね研究経過は順調であると考える。 今後は,表面プラズモン共鳴法を用いて,レクチンと唾液アミラーゼ間の結合強さをより詳細に検討する予定である。 さらに,唾液アミラーゼが認識するペリクル中糖鎖の網羅的解析も行うことで,唾液アミラーゼ自体が持つ糖結合性を解明し,天然由来レクチンと唾液アミラーゼ間の更なる相互関係解明につなげる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 唾液アミラーゼと天然由来レクチンの結合強さの検討: 唾液アミラーゼを固定化したチップを用いて表面プラズモン共鳴解析を実施し,唾液アミラーゼとレクチン間の結合強さを測定する。 2. 天然由来レクチンが唾液アミラーゼ活性に与える影響の検討: 唾液アミラーゼに濃度勾配を付与した天然由来レクチンを加えた際のアミラーゼ活性を測定する。 3. 口腔バイオフィルム形成時,天然由来レクチンが唾液アミラーゼ活性に与える影響の検討: これまで歯面への初期付着効果が判明している,齲蝕原因菌Streptococcus mutans単体でのバイオフィルム形成下,もしくは口腔バイオフィルム後期付着菌であり,歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisとの複合バイオフィルム形成下で,濃度勾配を付与した天然由来レクチンおよび唾液アミラーゼを添加し,アミラーゼ活性の測定とバイオフィルム量の定量を行う。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画より消耗品の消費が節約できたため,経費の使用節減に繋がり未使用額が生じた。今年度はレクチンなどの試薬使用量の増加など,研究費増大が見込まれるため,有効活用したい。
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