2021 Fiscal Year Research-status Report
アルギナーゼ1から展開するシェーグレン症候群ドライ症状治療の新戦略
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21K16958
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
大野 雄太 朝日大学, 歯学部, 講師 (30796644)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 外分泌 / シェーグレン症候群 / メタボローム解析 / アルギナーゼ1 |
Outline of Annual Research Achievements |
シェーグレン症候群は、涙や唾液の分泌が低下しドライアイやドライマウスを引き起こす難病である。これまで、涙や唾液を分泌する臓器である涙腺や唾液腺に慢性炎症が生じることで、涙液・唾液分泌が低下すると考えられてきた。しかし、治療薬は未だ対症療法に限られ、炎症の観点のみでは病態の全てを説明することができない。申請者は、これまでの研究により代謝酵素であるアルギナーゼ1の活性・発現低下が涙液分泌を低下させることを見出した。本研究はこのアルギナーゼ1を起点とし、代謝の観点からシェーグレン症候群の病態を見つめ直すものである。 2021年度はアルギナーゼ1を軸とした涙腺におけるメタボローム解析と、アルギナーゼ1研究の唾液腺研究への拡大を行った。涙腺においてはアルギナーゼ1阻害薬投与によりどのように代謝が変動するのか、特に水溶性代謝物について網羅的に知るためメタボローム解析を行った。その結果、いくつかの代謝物がアルギナーゼ1阻害により変動していた。唾液腺においてはアルギナーゼ1の発現をRT-qPCRとウエスタンブロットにより検討し、三大唾液腺におけるアルギナーゼ1の発現を確認した。また、マウス個体レベル(in vivo)においてアルギナーゼ1阻害薬が涙液分泌のみならず唾液分泌も減少させることを確認した。 以上より、涙腺におけるアルギナーゼ1阻害により起こる代謝変動を網羅的に把握することができ、また唾液腺でも涙腺と同様にアルギナーゼ1が外分泌を調節していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、外分泌に関わるエネルギー(ATP)データを収集した後にメタボローム解析を行う予定であった。しかし、副交感神経刺激薬投与後に秒単位で変動すると考えられるATP量を、ATP抽出キットを用いて測定することが困難であったため、先にメタボローム解析を行うこととした。 結果としてエネルギー基礎データの収集はできなかったが、当初の予定よりも早く涙腺におけるメタボローム解析を実施することができ、さらにアルギナーゼ1研究を唾液腺にも拡大することができたため、「おおむね順当に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は唾液腺のうち、顎下腺において臓器レベル(ex vivo)の灌流実験を行い、アルギナーゼ1阻害薬が全身性の影響を排除した条件下で唾液分泌にどのような影響を与えるのかについて検討する。アルギナーゼ1阻害により臓器レベルでも唾液分泌が減少していた場合は灌流液の条件を変えることで詳細にアルギナーゼ1の唾液分泌調節機構について検討する。また、涙腺のメタボローム解析により得られた情報を元に、アルギナーゼ1阻害により変動した代謝物が涙液・唾液分泌に関与するのかについてin vivoやex vivoの実験系を用いて検証する。
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Causes of Carryover |
2021年度はメタボローム解析に1,399,970円(13検体、税込)を要したため、残金30円は次年度に繰り越しとなった。
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Research Products
(1 results)