2021 Fiscal Year Research-status Report
審美修復材料および支台歯の汚染がレジンセメントの接着性に及ぼす影響
Project/Area Number |
21K16975
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石井 亮 日本大学, 歯学部, 助教 (20755144)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 唾液汚染 / レジンセメント / 表面自由エネルギー / 接着強さ / セラミックス / CAD/CAM用ハイブリッドレジン / 支台歯 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者および術者からの審美性に対する要求の高まりから,歯冠色を有する間接修復物が選択される症例が増加している。脆性材料である審美歯冠修復物を長期間口腔内で機能させるためには,接着性を有するレジンセメントを介した支台歯との一体化が求められる。一方, 修復物を口腔内で試適した際に生じる唾液や血液といったタンパク質による,修復物内面や支台歯汚染は,レジンセメントとの接着性を低下させる可能性があり,汚染の除去法については様々な方法が提唱されている。しかし,修復物内面および支台歯双方に有効であるとともに簡便な術式は確立されていないのが現状である。 そこで申請者は,表面自由エネルギーを指標として,界面科学的な観点からCAD/CAM用ハイブリッドレジン,セラミックスおよび支台歯への唾液汚染がレジンセメントの接着性に及ぼす影響を解明し,簡便で効果的な術式の確立を目的として本研究を計画した。 修復物内面への唾液汚染がレジンセメントの接着性に及ぼす影響に関する研究の多くは,接着強さの測定あるいは試験後の破断面における形態的観察によって評価されてきた。しかし,力学的強度試験による評価は,試験法あるいは使用する材料の機械的強さなどの様々な因子に影響を受けることも報告されており,必ずしも接着という現象を正確に反映しているものではない。従って,力学的強度試験とは異なった視点からの多角的な検討が望まれている。 これまで,申請者は,セラミックス表面における唾液汚染がレジンセメントの接着性に及ぼす影響について“表面自由エネルギー”を指標とした界面科学的観点からの検討を行ってきた 。そこで,修復物および支台歯表面における唾液汚染および表面処理後のレジンセメントの接着性を“接着界面における状態変化”あるいは“接着界面を構成する部材の相互作用”を界面科学的な手法によって評価するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、令和3年度の研究計画にて計画していたのは、各修復物における唾液汚染あるいは各表面処理後の表面自由エネルギーの測定であった。しかし、想定よりも研究の進捗が円滑であったため、歯質に対する唾液汚染後のレジンセメントの接着性と重合硬化に及ぼす影響や支台歯に対する唾液汚染後の影響についても研究をおこなった。その研究成果に関しては論文および国内学会において精力的に発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の結果を踏まえて表面処理後のCAD/CAM用ハイブリッドレジン,ジルコニア,二ケイ酸リチウム,コア用レジンおよび歯質(エナメル質,象牙質)における表面自由エネルギーの成分分析から,界面におけるレジンセメントとの相互作用について検討する。このことによって,各種表面に対するヒト唾液による表面汚染後の汚染物質の除去法および表面処理後のレジンセメントの接着性について考察する。 接着試験においては,表面自由エネルギー測定用試片と同様に調整した試片に対し,直径3 mmの穴をあけた,厚さ100 μmのテフロンテープを貼付し,被着面積を規定する。被着体としてはアルミナサンドブラスト処理を行なったステンレスロッド (直径10.0 mm) を用いる。ステンレスロッドにレジンセメントを塗布し,被着面に10 Nで10秒間圧接する。余剰セメントを除去した後,37℃相対湿度100% 湿潤下に5分または24時間保管する。所定の保管時間が終了した試片は,万能試験機 (Type 5500R, Instron, 現有) を用いて,剪断接着強さを測定する。また,試験終了後の試片に関しては,その破断面の破壊形式を分類評価する。 また,SEM観察においては表面自由エネルギー測定用試片と同様に処理した各試片を,通法に従ってフィールドエミッション型走査電子顕微鏡 (ERA-8800FE, Elionix, 現有) レーザー顕微鏡 (VK-9710, Keyence, 現有) を用いて観察する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,予定していた学会出張ができず旅費は使用しなかったが,実験の遂行は順調であったため物品費として使用した結果,端数が生じた。 繰越金と令和4年度助成金を合わせて,修復材料の追加購入にあてることで試片数を増やし実験の効率化とデータの精度向上を図る計画である。また、接着界面の観察も計画していることから、エポキシレジンの購入も検討している。
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Research Products
(8 results)