2021 Fiscal Year Research-status Report
帯電による結合作用を利用した新規石灰化促進タンパク質製剤の開発
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21K17018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長崎 敦洋 東北大学, 大学病院, 助教 (20890528)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周組織再生 / 石灰化 / セメント質 / 歯槽骨 / アルカリフォスファターゼ / リン酸 / ピロリン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
セメント質および歯槽骨は歯牙の植立に必要不可欠な硬組織である。歯周炎ではこれらの硬組織が破壊されることにより、歯の動揺や脱落が生じる。硬組織の形成は、石灰化を促進するリン酸と石灰化を抑制するピロリン酸により厳密に制御されている。リン酸/ピロリン酸代謝を担う分子の一つであるアルカリフォスファターゼ(ALP)は、ピロリン酸からリン酸を産生することにより石灰化を強力に促進する分子である。ALPのアイソザイムの1つである組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)は、生体内に広く分布し、石灰化や免疫の調節を行っている。 本研究では、歯周組織再生を促す新規歯周病治療薬の開発を目的に、セメント質や骨に強力に結合するアスパラギン酸残基(Asp)付加TNAPの作製に取り組んでいる。これまでの間、Aspを6つあるいは8つを付加したTNAPの遺伝子配列を有するプラスミドを作製し、宿主細胞に導入することにより、合成Asp6, Asp8 TNAPを作製することができた。また、これらAsp6およびAsp8 TNAPがALPとしての酵素活性を有していること、セメント芽細胞株の石灰化を有意に促進することを明らかにした。これらの結果により、安定的に本合成タンパク質を作製する方法を確立しつつある。さらに、歯周病の病態に類似した骨シアロタンパク(BSP)ノックアウトマウスにAsp6 TNAPを局所的に作用させたところ、Asp6 TNAPが歯周組織の再生を促進することが示唆された。以上から、本タンパク質は歯周病治療薬としての利用が期待される(日本歯科医学会第37回「歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い」優秀発表賞受賞)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、歯の植立に必要不可欠なセメント質や骨の再生を促進する新規歯周病治療薬の開発である。このため本研究では、石灰化を強力に促進する分子であるアルカリフォスファターゼ(ALP)のアイソザイムの1つである組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)に着目し、アスパラギン酸残基(Asp)を付加して本タンパク質を陰性に帯電させることにより、陽性に帯電している硬組織への結合を高め、優れた歯周病治療薬になり得るのではないかとの仮説を立てた。 これまでに行った研究により、Aspを6つあるいは8つを付加したTNAPの遺伝子配列を有するプラスミドを作製し、宿主細胞に導入することにより、合成Asp6, Asp8 TNAPを作製することができた。また、これらAsp6およびAsp8 TNAPがALPとしての酵素活性を有していること、セメント芽細胞株の石灰化を有意に促進することを明らかにした。これらの結果により、安定的に本合成タンパクを作製する方法を確立しつつある。さらに、歯周病の病態に類似した骨シアロタンパク(BSP)ノックアウトマウスにAsp6 TNAPを局所的に作用させたところ、Asp6 TNAPが歯周組織の再生を促進することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、アスパラギン酸残基(Asp)を付加した組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)の作製に成功し、これらの人工タンパク質が石灰化および歯周組織の再生を有意に促進することが示唆された。現在、追加実験を行い、より定量的な検討を行っている。また、Asp6およびAsp8 TNAPのどちらがより有意に硬組織に結合するかを検討する実験を予定している。また、TNAPの機能の1つである抗炎症作用に関する実験を、主たる歯周病原細菌であるP.gingivalisのリポ多糖(LPS)や歯周炎誘導モデルマウスを用いて行う予定である。
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Causes of Carryover |
東北大学着任前に在籍していた米国国立衛生研究所(NIH)から、本研究の遂行に不可欠な骨シアロタンパク(BSP)ノックアウトマウスを移送するにあたり、同研究所の飼育環境が東北大学動物実験施設の飼育環境に適合していないことが判明し、クリーン化が必要であった。本クリーン化に予想よりも多くの資金が必要となり(709,500円)、次年度使用額が生じた。
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