2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of isotropic fiber reinforced resin containing siliconcarbide long and short fiber.
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21K17019
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高 昇将 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00846082)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 繊維強化型レジン / SiC繊維 / 力学的等方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、繊維強化材の長繊維の持つ高い補強効果と、短繊維の持つ力学的等方性を組み合わせることで、高い機械的強度と力学的等方性を併せ持つ炭化ケイ素(以下SiC)繊維強化型レジンの開発を目的としており、これにあたりSiC短繊維の繊維長を決定する必要がある。先行研究にてSiC短繊維を用いた繊維強化型レジンを試作した際、繊維長2mmの場合に機械的強度が最も高くなったため、SiC短繊維の繊維長を2mmに設定した。 次にSiC長繊維とSiC短繊維の配置について検討するため、補強効果に優れる長繊維が1)圧縮側、2)引張側、3)圧縮側と引張側の中間にそれぞれ配置し、SiC長繊維を配置していない空間にはSiC短繊維を配置したSiC繊維強化型レジンを用いて試験片を試作し、3点曲げ試験に供した。試験片形状および3点曲げ試験条件はJIS T 6517:2011に準拠した。試験片の繊維含有量はSiC長繊維とSiC短繊維の合計が3vol%となるようにし、SiC長繊維のみを繊維強化材として用いた繊維強化型レジンの機械的強度について検討した先行研究と同一条件とした。結果、引張側にSiC長繊維を2vol%、圧縮側にSiC短繊維を1vol%配置した場合、最も高い機械的強度を示し、この値は先行研究で得られたSiC長繊維のみを繊維強化材として用いた試験片と同等であった。このことから、圧縮側にSiC短繊維、引張側にSiC長繊維を配置することで、力学的等方性と高い機械的強度の両立が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において今年度予定していたSiC長繊維とSiC短繊維の配置についての検討は、SiC長繊維とSiC短繊維を層状に配置する条件での機械的強度の評価は終了しており、当初の予定通りに進行している。しかしながら、SiC長繊維とSiC短繊維を均等に拡散させた条件の機械的強度について検討できていないため、これについては次年度検討する予定である。 一方、次年度実施予定だった長期耐久性評価のためのサーマルサイクル試験については、今年度時点で試験装置の故障が判明したため、代替の実験方法として、100℃水中に試験片を保管する加速劣化試験の準備を行った。更に、ベースレジンのみ、ベースレジンとSiC長繊維を組み合わせた試験片を用いた予備実験を開始している。本予備実験では、100℃水中に試験片をそれぞれ0,1,7,14,28日間浸漬した後、JIS T 6517:2011に準拠した曲げ試験に供し機械的強度を測定することで、ベースレジンの長期耐久性を評価する。現時点で得られた結果より、28日間浸漬してもベースレジンの機械的強度は有意な低下を示さなかったことからベースレジンの長期耐久性は確保できていることが示唆された。ベースレジンとSiC長繊維を組み合わせた試験片については、現在加速劣化試験中である。 また、SiC長繊維とSiC短繊維の混合割合についての検討を予定しているが、今年度実施した試験結果より、SiC長繊維:SiC短繊維=2:1(vol%)の割合で混合して試験片を作製した場合、先行研究で最も高い機械的強度が得られたSiC長繊維のみの試験片と同等の機械的強度を持つことが示唆されている。次年度はこの結果をもとに、長繊維の混合割合を増減させ、SiC長繊維とSiC短繊維の適切な混合割合について検討予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、SiC長繊維とSiC短繊維を層状に配置した場合、それぞれをどのように配置すると機械的強度が最も高くなるかについては検討が終了した。これに加えて、SiC長繊維とSiC短繊維を拡散させた試験片を試作しJIS T 6517:2011に準拠した3点曲げ試験に供することで機械的強度を測定し、それぞれを層状に配置した場合と拡散させた場合の機械的強度について比較検討を行うことで、力学的等方性と高い機械的強度が両立できる至適な繊維の配置を決定する。均一に拡散させた場合の方が力学的等方性に優れると予測されるため、層状に配置した場合と同程度の機械的強度が得られるのであれば、均一に拡散させた場合の方が種々の方向から力のかかる口腔内での使用には適していると考えられる。これにより繊維の配置を決定した後、当初の研究計画に従い、SiC長繊維とSiC短繊維の合計の含有量は変化させず、それぞれの混合割合を変化させた試験片を試作し、それぞれの適切な混合割合について検討予定である。 また、現在予備実験として実施しているSiC長繊維のみをベースレジンと複合化した繊維強化型レジンを100℃水中で保管する加速劣化試験による長期耐久性評価についての結果をもとに、同一条件下にてSiC長繊維とSiC短繊維を含む繊維強化型レジンの加速劣化試験を行い、得られた結果を昨年度得られた結果と比較することで、SiC長繊維とSiC短繊維の双方を含むSiC繊維強化型レジンの長期耐久性について検討する。
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Causes of Carryover |
令和3年度予算で購入予定であったディスポの実験器具、SiC繊維のシランカップリング処理用の薬品については想定していたよりも消耗が抑えられたため今年度は購入の必要がなかった。現在の消耗具合から想定すると、令和4年度に購入する必要があると予測される。また、試験片の破断面確認のためのEPMAの使用料についても想定していたより少額にとどまっている。現在、EPMAによる破断面観察を予定している試験片が残っているため、令和3年度に残余となった表面分析機器使用予算については、令和4年度に使用予定である。 現在、サーマルサイクル劣化試験の代替として準備し、予備実験を開始している加速劣化試験に用いるソックスレー抽出器、マントルヒーターが1組しかなく、1つの試験片条件でしか加速劣化試験を行えない。1つの試験片条件あたり、加速劣化試験に1ヶ月程度時間を要するため、複数の条件で同時に試験することで効率を上げる必要がある。このため、令和4年度に追加で加速劣化試験用の器具一式を追加で購入予定である。他に、試験片作製に用いるスライドガラス、プラスチックマトリックスといった消耗品類が減少してきているため、こちらについても追加で購入予定である。
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