2023 Fiscal Year Research-status Report
Bone formation by extracellular calcium in adipose stem cells
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21K17022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢内 理沙 (糸永理沙) 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (60755271)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 骨分化 / 骨再生 / Ca |
Outline of Annual Research Achievements |
顎顔面骨の欠損の再建には高度で繊細な技術を必要とする。現在主流となっている再建方法は金属プレートあるいは自家骨を用いたものであるが、感染の面や侵襲が大きいことなど問題点も多い。このため脂肪由来間葉系幹細胞(ASCs)を用いたより良い再建方法を確立したいと考え研究を行った。 私たちはこれまでにヒトASCs(hASCs)の骨形成分化におけるBMP-2の影響について検討を行い、BMP-2によって骨分化が促進させるという結果を得ている。ただ、リコンビナントBMP-2はコスト面や安全性の面で臨床応用は限定的である。そのためBMP-2によらない細胞外Caイオンのみを利用するhASCsの骨再生の可能性を探ってきた。その結果、細胞外Caイオン濃度を上昇させることにより、hASCsに自らBMP-2を分泌させ、autocrine / paracrine 的に自ら骨形成分化を誘導活性化する可能性が示唆された。また、その細胞内シグナル伝達機構にはCa / CaM / NFAT経路の関与が示された。このことから、実際にin vivoでのCaイオン刺激を加えたhASCsの骨分化再生能を解析することで、臨床応用可能であるか明らかにすることとした。 まずはヌードマウスの皮下に立体構造の骨を作ることを目的とした。足場はポリ乳酸(PGA)を使用した。hASCsを立体構造のPGAと共に通常の培地で培養すると3日目には細胞の付着が確認できた。培養7日目に高濃度Caイオンを含む骨分化誘導培地に替えると、hASCsは骨へ分化し始めた。このままさらに骨分化誘導培地で7日間培養したのち、PGAをヌードマウスの皮下に移植した。皮下移植後4週間で再度PGAを分析すると、成熟骨で覆われていることが確認できた。 このことを踏まえ、現在は実際に顎裂を持ったマウスを作成し、皮下ではなく顎裂部に移植することを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標は、Caイオン誘導性hASCsの骨形成を確立し、より安全に効果的にかつ安価に骨を再生させることにある。私たちはこれまでに、Caイオン刺激によりhASCs自らBMP-2を産生するうえでのシグナル伝達に関与が示唆される因子やhASCsの骨形成分化を誘導活性化する経路を検索してきた。その結果を踏まえ、in vivoにおいてCaイオン刺激を加えたhASCsの実際の骨分化再生能を解析することで、臨床応用可能であるか明らかにすることを目的とした。 そのための最初の目標として、ヌードマウスの皮下にPGAを足場としたhASCsの立体構造を移植し骨形成を確認することとした。臨床応用する際には欠損している骨と同じ形態のPGAを用いたいと考えているため、様々な形態のPGAで細胞が付着するか検討した。またPGAの大きさに対して最初に播種する細胞数をどのくらいにするか、通常培地での培養期間や骨分化誘導培地への交換のタイミングと期間も、最適ではないかと思われる方法が考えられた。皮下への移植する技術も上達し骨が形成されることが確認できている。培養時のCaイオンの有無で形成された骨の成熟度に差があるかも示すことが出来ている。 現在は顎裂部での骨再生を検討している。実際に顎裂を有するマウスの骨欠損部に細胞を付着させたPGAを移植する。そのためにはまず顎裂モデルマウスの作成が必要とである。A/WySnマウスは口唇裂、唇顎口蓋裂の自然発症が高いことが知られていることから、これらのマウスより顎裂モデルマウスを作製することを考えた。しかしながら必要な個体数を準備することにかなりの時間を要した。また、骨の成長は遅く、成熟度や周囲骨との変化を確認するためには想定していた以上の長い期間経過見ていく必要があり、十分な症例を得られていない。このため研究はやや遅れていると言いわざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は、Caイオン誘導性hASCsの骨形成を確立し、より安全に効果的にかつ安価に骨を再生させることにある。高濃度のCaイオンは人体にとって有害なため、in vitroにおいてhASCsの骨分化誘導を行い移植することを目指している。皮下への移植においては、Caイオン刺激を加えたhASCsの骨形成分化能は、刺激を加えなかっ場合と比較して高いことが確認できている。ただこれは細胞の骨成熟度であり、顎裂部においては移植したPGAが周囲骨と一体化していかなければならない。その検証のためにはまず顎裂モデルマウスの作成が必要であるが、容易には得られなかった。口唇裂、唇顎口蓋裂の自然発症が高いことが知られているA/WySnマウスからの顎裂モデルマウスの作成を行ったが、裂の幅や深さにかなりのばらつきがあった。このような条件下でCaイオン刺激の有無により骨形成分化に差があることを示すことは困難であった。このため現在は長い経過を見ながらCT撮影を行い、その変化を追っているところである。また同時にさらに多くの顎裂モデルマウスを作成しているところであり、今後は移植後の期間によってどのくらい骨の成熟度に差があるかその都度染色等で確認できればとも考えている。 将来的には骨欠損患者のCTより3Dプリンタを用いてその顎骨モデルを作成し、欠損に合わせたPGAに患者の皮下より採取したhASCsを付着させ移植するだけで骨の形成・再建が可能となるだろう。臨床応用が可能となれば健全部位からの骨採取が必要なくなり患者の負担は大幅に軽減されると考える。その際にCaイオンにより骨形成分化が早まるのならば治療期間も短くなり患者のQOLの上昇を期待できると考える。
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Causes of Carryover |
今年度の研究では、すでに持っている試薬や機器で賄うことができ新たな購入は少なかった。またマウスに関しても研究室全体で管理しているものから研究を行うことが出来た。ただし、今年度は使用するマウスの数も少なかったため追加購入の必要がなかったが、今後は数を増やす予定なので予算が必要と思われる。さらに次年度は最終年度であることから、論文の投稿も予定しており、その校正等でも次年度は当初見込まれた使用額より増えることが考えられる。
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