2021 Fiscal Year Research-status Report
即時埋入とPTH製剤の相乗的骨量・骨質向上効果による革新的インプラント治療法開発
Project/Area Number |
21K17023
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
右藤 友督 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10816680)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インプラント / 即時埋入 / 骨質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ラット上顎における抜歯後インプラント即時埋入の有効性を分子生物学的に検証し,更にPTH製剤を応用した新しいインプラント埋入治療法を開発することである. 実験準備の段階で,研究代表者らが従来使用していたラット用インプラントの表面に酸処理を加えることにより,ラット上顎骨におけるオッセオインテグレーションの成功率が10%超上昇することが明らかとなった.これより,本研究ではこの酸処理を加えたインプラントを使用することを決定した.この表面処理は臨床でも広く使用されているものである.9週齢wisterラットの上顎両側第一臼歯を抜歯し,4週間後にインプラント埋入を行った(待時埋入群:各n=7).埋入後7,14,21日後にラットを屠殺し,マイクロCT撮影と各種染色によるインプラント周囲骨組織の経時的変化を解析中である.マイクロCTならびにH-E染色により,待時埋入群のインプラント周囲骨形成は埋入後3週で完了することが確認され,ピクロシリウスレッド染色により,非荷重条件下のインプラント周囲コラーゲン線維はインプラント体表面に沿って配向することが分かった.埋入後7,14日には破骨細胞ならびに骨芽細胞の増加が確認され,幼若な骨の形成が進行していることが組織観察により確認された.次にラット上顎第一臼歯抜歯後,即時インプラント埋入を行い,待時埋入と同様の7,14,21週後に屠殺を行った(即時埋入群:各n=7).解析のため薄切切片製作が進行中である. 定量qPCRによるインプラント周囲骨組織の遺伝子発現解析のため,即時埋入群,待時埋入群を別途作成し同様の実験を継続中である. 抜歯即時インプラント埋入の有効性を証明するために,待時埋入との分子生物学的比較を行い,両者の相違点の有無を見出すこと,または相違点が無いことを確認する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,実験に使用するインプラントの表面処理を改良することとなった.従来は純チタン製インプラントの表面にブラスト処理のみを行っていたが,この上に酸処理を追加することで更に微細な凹凸を付与し,骨形成細胞の遊走を促進する効果が期待される.これによりインプラントの生着率が向上し,より再現性の高いデータが得られると考えられる.新しいラット用インプラントを発注したため実験の開始は年度の半ばごろとなったが,ラット上顎臼歯の抜歯とインプラント埋入は過去の研究で既に確立しているためスムーズに行うことができた.抜歯即時インプラント埋入は本研究で初めて経験する手技であったが,待時埋入と大きな違いはなく,問題なく実施することができた.組織染色による解析もH-E染色,TRAP染色,ピクロシリウスレッド染色,Runx2免疫染色による定量解析は以前より行っている方法が利用可能である.研究代表者が経験していない新たな解析手段を知るための情報収集は,新型コロナウィルス流行による学術大会のオンライン化でやや難しくなったが,文献検索等で引き続き行っていく. 以上より,実験開始がやや遅れたが大勢には影響せずおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度に作成した抜歯後待時インプラント埋入モデルと,抜歯後即時インプラント埋入モデルの比較を行う.また抜歯窩治癒のみのモデルも作成して,抜歯窩の治癒とインプラントのオッセオインテグレーションによる骨形成を比較する.即時埋入群では,抜歯窩の治癒とインプラントのオッセオインテグレーションがオーバーラップする現象を詳細に解析する予定である.定量qPCRによる遺伝子発現解析を行うためには切片製作用と別サンプルを作成する必要があるため,前年度と同じ実験を行う. 抜歯窩の治癒,待時埋入,即時埋入それぞれの骨形成における分子生物学的変化を詳細に確認し,即時埋入の有効性を証明する.更に,抜歯即時インプラント埋入に骨形成促進を期待したPTH製剤投与を行い,生理食塩水投与群と比較して効果を判定する.PTH製剤投与の時期はR3年度の実験結果をもとに決定する. R5年度にすべての結果を統合して,抜歯即時インプラント埋入とPTH製剤を使用したインプラント治療法開発の基礎データ構築を目指す.
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