2023 Fiscal Year Annual Research Report
新規高水準消毒法としての水酸化ラジカルの応用:細菌芽胞における殺菌作用機序の解明
Project/Area Number |
21K17057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宍戸 駿一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (20850613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒドロキシルラジカル / 芽胞 / 殺菌 / 高水準消毒薬 / TEM / ESR |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、Bacilus cereusの細菌芽胞培養法を検討した。培養した芽胞を、位相差顕微鏡、Wirtz染色法、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、培養法の評価を行った。続いて、芽胞に対する殺菌試験を行い、過酸化水素の存在下で波長400 nmのLEDを放射照度1000 mW/cm2で15分間照射することで、5 log以上の生菌数減少を確認した。 2022年度は、LEDの波長や照射時間を変えて殺菌試験を行った結果、Bacilus cereusの細菌芽胞に対する過酸化水素光分解殺菌法の殺菌効果は、光照射時間依存的かつ波長依存的であることが分かった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、芽胞の形態観察を行った。さらに、電子スピン共鳴(ESR)を使用した予備試験を実施した。 最終年度である2023年度には、ESRスペクトルを利用して芽胞の膜損傷の有無や内部構造の性質変化を考察するため、測定方法を検討した。測定試料の体積を統一するため、試料管として内径1 mmのガラスキャピラリーを採用した。殺菌処理を行う前の芽胞については、4-オキソ-TEMPOとフェリシアン化カリウムの細胞膜透過性の違いを利用したシャープなESRスペクトルが得られた。しかしながら、殺菌処理後の芽胞に関するスペクトル形状が安定せず、現在条件検討を行っている。また、TEM観察用の電子染色について、複数の染色液の組み合わせを試し、細胞膜やコアの構造が良く観察できる条件を検討した。 現在、細菌芽胞に対する過酸化水素光分解殺菌法の殺菌効果について確認できたが、その作用機序解明には至っていない。今後は、ESR測定の条件検討を継続し、スペクトルの形状から殺菌作用の機序解明を目指す。また、殺菌治療後の芽胞をTEMで観察することで、形態変化からも殺菌作用機序解明を行いたい。
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