2023 Fiscal Year Annual Research Report
食後血糖値に対する咀嚼回数,唾液量およびアミラーゼ活性の影響
Project/Area Number |
21K17062
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上原 文子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (50878288)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 食後血糖値 / アミラーゼ活性 / 唾液 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、咀嚼行動が肥満・糖尿病に与える影響を調べ、特に唾液中の消化酵素であるアミラーゼ活性の影響に着目し,咀嚼によって糖尿病を防止する可能性を模索する事である。本研究では、「多く噛む人ほど肥満や糖尿病が少ないのか、 同程度の咀嚼回数で肥満度に違いがあった場合、それは何の違いによるのか」と言う本質的な問いを掲げ、咀嚼に関して粉砕する以外の要素である唾液に着目することとし、咀嚼回数と唾液量や成分(アミラーゼ活性)と血糖値の関係を明らかにすることを目的とした。解析の結果、当初の想定に反し被験者は、血液検査の結果HbA1cの値が5.5未満の健常成人19名、正常高値11名であり、境界型と診断されるHbA1c:6.0以上6.5未満の被験者は1名のみであった。各計測項目で,Spearmanの順位相関係数を用いて唾液中のアミラーゼ活性との相関を調べたところ、30分後の食後血糖に対してのみ弱い相関を認めた(r=0.205)。また、唾液量については、咀嚼能率と極めて弱い相関が認めた(r=0.101)。今回の結果では、統計的な有意差は出なかったが、アミラーゼ活性が高い被験者の方が、咬合力が高く、取込み回数および咀嚼回数は少なく、食事時間は短い傾向を示し(いわゆる“早食い”の傾向)、30分後、60分後の食後血糖値は高かった。今回の結果では、噛む回数が少なく・食事時間が短かったアミラーゼ活性高値群の方が食後30分後の血糖値が有意に高くなっていた。過去の報告では、噛む回数が少なければ食物の粒子は大きくなるため、吸収が遅くなり食後の血糖値の上昇は遅くなると考えられていたが、今回の結果では、アミラーゼ活性高値群は咀嚼回数が少ないにも関わらず、食後30分後の血糖値は有意に高く、過去の報告とは異なった結果だった。 以上から、健常成人のアミラーゼ活性の違いは食後30分後の食後血糖値に影響を与える可能性がある。
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