2021 Fiscal Year Research-status Report
サルコペニアによる嚥下障害に対する全身へのレジスタンス訓練効果の検証
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21K17078
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
仲澤 裕次郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (70847623)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嚥下障害 / サルコペニア / 運動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、摂食嚥下機能障害患者に対する全身の運動療法の効果を検討することである。具体的には、サルコペニアに関連付けられる摂食嚥下障害を一症状と捉え、全身の筋力を向上させると、咀嚼や嚥下に関連する筋力にどのような影響を与え、さらに、摂食嚥下機能にはどのような影響を与えるかを明らかにしたいと考えている。高齢者の要介護状態の原因に筋力低下が指摘されていることからも、低栄養による筋肉量の低下に対する対応が必要である。その一方で、全身の筋肉量の低下に起因する嚥下障害である Sarcopenic Dysphagiaも注目を集めている。本研究は、サルコペニアを改善するために行う全身への運動療法はSarcopenic Dysphagiaの改善になると考え、運動療法による摂食嚥下機能障害患者の筋肉量の変化や栄養管理を含めた摂食嚥下リハビリテーション効果への影響を前向き研究として検証しようとするものである。 研究代表者は、外来受診した摂食嚥下障害患者へ1年間の摂食嚥下リハビリテーションを行い、その効果に関して検討し、舌筋力の増加量と介入開始時の全身の骨格筋量に関連があることを示した。これにより、摂食嚥下障害患者にとって骨格筋量を維持することは、摂食嚥下リハビリテーションの良好な予後に関連を示すことを明らかとした。そこで本研究では、サルコペニアによる摂食嚥下障害患者に対して、従来の口腔に特化した摂食嚥下リハビリテーションに加え、サルコペニア改善を目的とした全身に対する運動療法を行う事でより効果的に嚥下障害が改善されるのではないかと考えている。 自宅での運動療法は、対象者に自宅で自発的に継続してもらう必要がある。簡便さと訓練効果を備えた運動療法メニューを協力作業療法士とともに作成し、対象者に対し指導を行う準備を終えている。また、外来患者に対し当研究の趣旨を説明し、3名のエントリーが決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象者は、研究者の勤務する医療機関の外来高齢患者に協力を求める計画であるが、研究開始時に新型コロナウィルスの感染者数増加に伴い、外来患者のキャンセルも多く予定通りの対象者設定に時間がかかっている。外来患者以外の地域高齢者において、対象になりうる協力者を探すことも検討したが上記と同じく進める事が困難となっていた。しかしながら令和4年4月以降、新型コロナウィルス感染症の感染者数が微減を続けていることから、令和4年度は対象者のリクルートが容易になっていくと見込んでいる。 現在は、地域訪問看護ステーションに所属する作業療法士の協力者選定が終了し、研究計画に基づき、対象者への運動療法メニューの作成を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
協力作業療法士と共に運動療法メニューの作成・必要器具の購入を行い次第当院の外来患者から研究対象者のリクルートをより進める予定である。 サルコペニアは全身の骨格筋量の低下に加えて歩行速度または握力の低下がある状態であることから、これらの下位因子と各口腔機能との関連についても明らかとする。骨格筋量の測定にはDXA法(Dual-energy X-ray absorptiometry法)、BIA法(生体電気インピーダンス法)、四肢周囲径やCT、MRIを用いた方法が考えられるが、対象者は高齢で体力の低下も予測されるため、低侵襲で計測に時間のかからないBIA法を用いる。また、実際の測定には姿勢などの制限を考慮し、座位や仰臥位での測定も可能な当科に既存の設備機器のIn Body s10を使用する。 Sarcopenic Dysphagiaと診断された患者に対して無作為割り付けを行い、対象患者の症状に応じて計画立てたレジスタンス訓練を中心とした従来の摂食嚥下リハビリテーション介入を行う場合と、それに加え全身の骨格筋量増加を目的とする運動療法を行う場合を比較し、リハビリテーション効果にどのような影響を与えるか比較検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が予定よりも遅滞しており、対象者の選定が完了していない状況であるため、口腔機能・身体機能の測定にまで至っていない。そのため、当初予定していた必要器具ならびに測定時の人件費の支出がなくなっている。また、データ集積後には統計処理を行う関係上、統計用のソフトの購入を予定している。
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