2022 Fiscal Year Research-status Report
高齢者における骨修復能破綻機構の解明と高齢骨疾患患者への骨修復法の開発
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21K17083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田澤 美樹 (柏木美樹) 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70803360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 骨折 / 骨修復 / Gli1 / Runx2 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はまず、マウス遺伝学を用いたLineage tracing解析により、骨修復に寄与する細胞集団の同定を検討した。これまでの研究で、骨発生過程における体性幹細胞集団を特徴づける遺伝子として、Gli1が報告されている(Nat Commun 8(1):2043, 2017)。そのため本研究では、Gli1遺伝子により特徴づけられる細胞集団について解析を行った。Gli1-CreERT2マウスを、Cre依存的に蛍光タンパク質Tomatoを発現するtdTomatoマウスと交配し、そのコンパウンドマウス(Gli1-CreERT2;tdTomato)を作出した。Genotyping用プライマーとPCR条件を検討することで、Genotyping PCRを最適化した。作出したコンパウンドマウスの長管骨において骨欠損を作製した。骨欠損作製前後4日間連続して、タモキシフェンを投与し、Gli1陽性細胞をtdTomatoで標識した。その後、異なる期間経過後にマイクロCTを用いて骨修復過程を観察した。その結果、骨欠損作製後4週間で骨の癒合が認められた。ヘマトキシリン・エオジン染色およびサフラニンO染色を用いた組織学的解析により、欠損後2週間では内軟骨性骨化様の軟骨組織や骨組織が認められたのに対して、欠損4週間後には、骨欠損部は新生骨が形成され、骨リモデリングが認められた。現在、tdTomatoシグナルと免疫組織学的解析によりGli1系譜細胞の運命決定機構の検討を進めている。軟骨細胞のマスターレギュレーターであるSOX9、骨芽細胞のマスターレギュレーターであるRUNX2、SP7、脂肪細胞マーカーであるPPARγ、筋線維芽細胞マーカーであるSmooth muscle alpha-actin (αSMA)について、抗体および染色法の最適化を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、コンパウンドマウス(Gli1-CreERT2;tdTomato)を作出に成功している。 また、そのコンパウンドマウスにおいても、Gli1陽性細胞の同定を確認することができた。骨折の治癒過程においてそれぞれの骨の修復状態を観察することもでき、そこから新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、tdTomatoシグナルと免疫組織学的解析によりGli1系譜細胞の運命決定機構の検討を進めている。軟骨細胞のマスターレギュレーターであるSOX9、骨芽細胞のマスターレギュレーターであるRUNX2、SP7、脂肪細胞マーカーであるPPARγ、筋線維芽細胞マーカーであるSmooth muscle alpha-actin (αSMA)について、抗体および染色法の最適化を開始している。これらの結果を踏まえ、高齢患者での骨疾患に対する骨修復法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画の中で、学会発表や論文の作成がやや遅れているため、来年度の発表に向け次年度で使用する額が生じた。また、マウスの飼育数が想定よりやや少なかったため、来年度に繰り越し、サンプル数を増やしていく予定である。
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