2022 Fiscal Year Annual Research Report
炎症シグナルが誘導するサイトカインネットワークと口腔癌転移機構の解明
Project/Area Number |
21K17095
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
馬場 隼一 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (40644539)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サイトカイン / 口腔癌転移 / GO解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞内の炎症シグナルは多くの遺伝子の発現を変動させ、その結果、癌細胞自体がサイトカインを分泌するようになる。分泌サイトカインは周囲の細胞に作用し、増殖や転移に関する複雑なネットワークを形成する。近年このサイトカインネットワークの連鎖を断ち切ることが癌進展を制御する方法として注目されている。本研究の目的は、口腔癌における炎症シグナルとサイトカインネットワークの関連を明らかにすることであり、診断マーカーや治療標的分子の同定を目指した。口腔癌細胞株HSC-3細胞とその高転移能株HSC-3-M3細胞の遺伝子発現の相違を比較検討した。トランスクリプトーム解析では1018個のRNA、プロテオーム解析では476個のタンパク質に発現の差が認められた。トランスクリプトームの違いに注目してGene Ontology(GO)解析を行うと、炎症に関するGO termが有意にenrichされた。またプロテオームのGO解析では、HSC-3-M3細胞で発現が増加するタンパク質では「cadherin binding」など細胞間結合に関するGO termが多くを占めた。一方、発現が低下するタンパク質には「nucleosomal DNA binding」などヌクレオソームやクロマチン関連のGO termが有意に認められた。さらに抗体アレイで解析したところ、HSC-3細胞と比較してHSC-3-M3細胞では炎症経路に関わるいくつかのシグナル伝達分子のリン酸化が亢進していることが示唆された。これらの解析から、高転移能を有する口腔癌細胞では様々な分子や経路が活性化していることが明らかになった。
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