2022 Fiscal Year Research-status Report
多機能性リポソーム製剤による口腔癌に対する新たなドラッグデリバリーシステムの開発
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21K17102
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
竹澤 晴香 (山口晴香) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (00756942)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リポソーム / Affibody / 光免疫療法 / IR700Dye |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、リポソームによる新しいドラッグデリバリーシステムの開発である。生体成分を構成するリン脂質を主成分とするリポソームは、様々な薬物を封入することが出来る。従来のリポソーム製剤は、癌組織の内部に新生された未成熟な血管にある隙間を利用して癌組織に到達し集積する。集積後、リポソーム製剤はエンドサイトーシスによって癌細胞内に取り込まれて代謝され、薬物を細胞質内に拡散させる。しかし、このリポソーム製剤は分子標的薬と比較すると特異性に欠けるなどの問題がある。本研究ではリポソームに、抗体小分子と光感受性物質の結合体を付加することで、光免疫療法の機能を備えた多機能性リポソーム製剤を開発し、より効果的で特異的な癌治療を実現することを目指す。 交付申請書では、以下の5点を当該年度までに行う予定であった。① 多機能性リポソーム製剤を作製、② 薬物放出の確認、③ 多機能性リポソーム製剤の癌細胞への特異的な取り込みを確認、④ 細胞内での薬物拡散を確認、⑤ 光免疫療法 現在、④を抜かした⑤まで達成している。④が達成出来ていない理由は、すべての多機能性リポソームが細胞内に入るタイミングが分かりにくいため、近赤外光を照射すると細胞膜に結合した多機能性リポソームが細胞膜を破壊してしまい、細胞外にも薬物の拡散がみられて細胞内特異的に薬物が放出されているのかどうか分からない点にある。 当初から、多機能性リポソームが癌細胞内外に存在して、細胞内外からそれぞれ光免疫療法と薬物によって死滅させる計画であったので、④は必ず達成しなければならない項目ではない。もう少しインキュベート時間などを工夫して実験をしてみるが、難しいようであれば、効果的に癌細胞を死滅させることが出来ている現状で良しとして、次の段階に進むことを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 多機能性リポソーム製剤を作製 ② 薬物放出の確認 ③ 多機能性リポソーム製剤の癌細胞への特異的な取り込みを確認 ④ 細胞内での薬物拡散を確認 ⑤ 光免疫療法 当初予定していた上記の5つの項目のうち、④を除くすべてを達成できている。今年度からは予定通り動物実験に移行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、まだ達成していない細胞内での薬物拡散を確認する。これまで、蛍光標識した薬物をリポソーム内に包埋し、そのリポソームを細胞培養液に添加して30分インキュベートの後に近赤外蛍光を照射したが、細胞内特異的に蛍光を確認することはできなかった。これは、細胞表面に結合したリポソームが照射によって壊れ細胞外にも蛍光が見られたことが原因である。 今後は15分から24時間程度までインキュベート時間を割り振って検討し直す。また、蛍光顕微鏡では強拡大をして細胞一つに絞り、細胞内の蛍光を継時的にモニターすることを試す。 その後、マウスを用いて生体内で同じように多機能性リポソームが機能するかどうかを調べていく。生体内では肝臓でリポソームが破壊されることが考えられるので、まずは静脈内注射によって腫瘍に到達するかを確認する。もし、うまくいかなければ腫瘍に直接リポソーム製剤を注射することも検討する。
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Causes of Carryover |
動物実験用に、細胞移植の際に使用するマトリゲルや試薬を購入しようとしたが、値上がりにより当初の予定額では購入することが出来ず、次年度購入となった。余った金額は次年度と合わせて、予定通りマトリゲルとその他試薬を購入する。
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