2021 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜におけるSARS-CoV-2 結合受容体の免疫応答機構の解明
Project/Area Number |
21K17116
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鳴瀬 貴子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (20795489)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SARS-CoV-2 / アンギオテンシン変換酵素II / 口腔粘膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因ウイルスである SARS-CoV-2 は細胞表面に存在するアンギオテンシン変換酵素II (ACE2) を受容体として結合することが報告されている。ACE2 は不全心筋から発見されたアンギオテンシン変換酵素(ACE)の相同体でアンギオテンシン2をアンギオテンシン1-7 に変換する酵素である。一方,口腔粘膜細胞は細菌,ウイルスなど病原体の侵入に対して自然免疫応答に伴う特異的な防御反応を惹起すると考えられる。ACE2 は舌などの口腔組織に発現していることが近年報告されているが,ACE2 の口腔粘膜上皮細胞や線維芽細胞における発現は不明である。本研究は口腔粘膜におけるウイルス感染に対するACE2 の新規宿主免疫応答機構を解明することを目的とする。 2021年度は口腔粘膜細胞における ACE2 の発現と局在について検討した。口腔粘膜上皮細胞と線維芽細胞においてACE2プライマーを用いたRT-PCR によるACE2 mRNA の発現を検討した結果,不死化口腔粘膜上皮細胞RT7, 不死化歯肉線維芽細胞GT1,正常口腔粘膜上皮細胞,正常歯肉線維芽細胞において同様に定常的にACE2 mRNA が発現していることが認められた。蛍光標識した ACE2 抗体を用いた免疫染色を行った結果,RT7およびGT1においていずれの細胞にも細胞質にACE2が局在することが明らかとなった。またACE2 抗体を用いたWestern blotting 法の結果,口腔粘膜上皮細胞と線維芽細胞におけるACE2 タンパクが発現していることが示された。今回の結果,口腔粘膜上皮細胞,線維芽細胞ともにACE2 が発現していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り,口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞においてACE2がRT-PCR 法,Western blotting 法によってmRNA ,蛋白のレベルで発現していることが示された。またACE2 が口腔粘膜上皮細胞、線維芽細胞の細胞膜に局在していることが明らかになった。現在, ACE2抗体を用いた免疫組織学的染色によってACE2 の正常口腔粘膜上皮組織における発現を検討し,ACE2 が口腔粘膜上皮組織に発現していることを確認している。概ね研究計画は良好であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は口腔粘膜細胞におけるACE2の発現誘導機構を検討する。RT7, GT1 にTNF-α, IFN-γ などの炎症性サイトカインや各種Toll-like receptor ligand,ウイルス由来核酸などの微生物構成成分を添加することによるACE2の発現誘導をReal-time PCR法, Western blotting 法によって検討する。さらにACE2 欠損による抗ウイルス関連遺伝子発現の影響を明らかとするため,RT7, GT1 で誘導が認められた ACE2 を特異的 siRNA や中和抗体で抑制した際の誘導されるIFN-βなどの抗ウイルス関連遺伝子の影響を Real-time PCR法, ELISA 法にて検討する予定としている。
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