2023 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜におけるSARS-CoV-2 結合受容体の免疫応答機構の解明
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21K17116
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鳴瀬 貴子 広島大学, 病院(歯), 助教 (20795489)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ACE2 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因ウイルスである SARS-CoV-2 は細胞表面に存在するアンギオテンシン変換酵素 ACE2 を受容体として結合することが報告されている。ACE2 は口腔組織に発現していることが近年報告されているが,ACE2 の宿主免疫応答機構は不明である。本研究は口腔粘膜におけるウイルス感染に対するACE2 の新規宿主免疫応答機構を解明することを目的とする。 2023年度は下記について検討した。 ①核酸導入によって誘導されるACE2 の発現誘導を活性化する因子を検討するため, IFN-γ, TNF-α,IFN-βの影響について検討した。その結果、RT7においてdsRNAとIFN-γ, dsDNAとTNF-αを同時添加した場合にACE2の発現が有意に増加した。また, IFN-βを添加した場合はdsRNA, dsDNAいずれにおいてもACE2の発現が有意に増加した。一方、GT1においてはdsRNA、dsDNAにIFN-γ, TNF-α,IFN-βを添加してもACE2の有意な増加は認められなかった。 ②SARS-CoV-2のSpike蛋白はACE2に結合し, 宿主の免疫応答を調節すること, Spike蛋白によって免疫細胞よりCXCL10が誘導されることが報告されている。口腔粘膜細胞におけるIFN-γ, TNF-α,IFN-βで誘導されるCXCL10に対するSpike蛋白の影響とACE2の関与について検討した。口腔粘膜細胞にSpike蛋白を単独で導入してもCXCL10の上昇は認めなかった。一方、RT7にSpike蛋白とIFN-γ, TNF-α,IFN-βを導入した場合,IFN-γ, IFN-βを導入した場合にCXCL10の有意な上昇が認められた。GT1においてはTNF-α,IFN-βを導入した場合にCXCL10の有意な上昇が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した目的のうち、上記に示すように、核酸導入によって誘導されるACE2 の発現誘導を活性化する因子、および免疫応答を活性化させる因子について検討した。ACE2 を特異的 siRNAによって抑制させた際の影響については現在研究途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
下記内容について検討していく予定である。 ①ACE2 抑制,過剰発現による核酸で誘導される新規免疫応答機構の解析のため,中和抗体によって ACE2 の発現が抑制された株や ACE2 過剰 発現株とコントロール株における核酸導入で誘導される遺伝子発現の比較をマイクロアレイによって網羅的に解析し,ACE 2 を介して誘導,抑 制される遺伝子群を抽出する。その後免疫応答経路のパスウエイ解析を行う。またそれらの経路の転写阻害剤を用いて核酸で誘導される炎症応 答の影響を検討し,キー蛋白を解析する。
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Causes of Carryover |
育休中断したため、次年度使用額が発生した。 次年度はACE2 抑制,過剰発現による核酸で誘導される新規免疫応答機構の解析を行う予定であるため、それらの研究および論文作成等で使用する予定である。
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