2023 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌のΔNp63を介したEMTにおけるPAR1の役割と機能について
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21K17117
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
服部 多市 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (10897185)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | PAR1 / ΔNp63 / thrombin / EMT |
Outline of Annual Research Achievements |
protease-activated receptor(PAR)1はGタンパク共役型受容体の1つである。これまでに我々は、口腔扁平上皮癌(OSCC)の腫瘍中心部から浸潤先端部にかけて、転写因子であるΔNp63の発現が減弱し、PAR1の発現が増強したことを示してきたが、その役割は不明なままであった。本研究では、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるprotease-activated receptor(PAR)1の発現と上皮間葉転換(EMT)との関与について検討を進め、PAR1をOSCCの診断・治療におけるバイオマーカーとして確立することを目的としている。今回、OSCC組織標本を使用し免疫組織学的にΔNp63とPAR1の関連について検索を行なったところ、浸潤先端部においてΔNp63の発現減弱を認めた症例ではPAR1陽性群に多く、有意に関連していた。また、OSCCの頸部リンパ節転移の要因となる臨床病理学的因子の検索をロジスティック回帰分析による多変量解析を行なったところ、PAR1の発現様式にのみ統計学的有意差を認め、腫瘍細胞におけるPAR1陽性群は陰性群と比較し頸部リンパ節転移の発生率が有意に高かった。 この結果は、PAR1が発現することによりOSCCの進展に必要であることを示すと同時に、予後予測因子としても有用であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OSCCにおけるPAR1の発現とEMTとの関連についてを解明する上で、ΔNp63およびthrombinの免疫組織化学的染色によるOSCC組織における発現検索および臨床病理組織学的所見との関連についての検討を行い、さらにOSCC細胞株における浸潤能についての機能実験を実施したため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に則り、以下の内容について計画している。 ①浸潤先端部におけるPAR1陽性間質細胞が、腫瘍細胞にどのような影響を与えているかin vivoの実験を可能な限り進めていく予定である。 ②ヌードマウスを用いたin vivoでの転移能の解析:PAR1を過剰発現または発現抑制させたOSCC細胞株およびそのコントロール細胞をヌードマウスへ同所性移植し、造腫瘍能および転移能について検討する。原発巣および転移リンパ節の切除標本を作製して観察する。
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Causes of Carryover |
本年度は、以前購入していた実験器具、薬剤により研究を進めることができた。また、学会もオンラインによる参加が多かったため、旅費にかかる金額も少なかった。しかし、次年度では、当初の研究計画に沿って、細胞機能実験用のキットおよびヌードマウス等の購入を予定しており、学会も現地開催となっていくことが予想されるため、繰り越した分を次年度で使用する予定である。
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