2022 Fiscal Year Research-status Report
H19長鎖非コードRNAの作動原理に基づく核酸医薬による神経障害性疼痛治療
Project/Area Number |
21K17132
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 孝哉 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教 (00880650)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 長鎖非コードRNA / H19 / シュワン細胞 / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
体性感覚神経の障害に伴う神経障害性疼痛は、特に歯科麻酔領域においては三叉神経痛や 舌咽神経痛などが挙げられるが、慢性に経過し難治性で苦痛が強いため、積極的に治療する ことが求められる。近年では、神経障害性疼痛の病態生理において、末梢神経系における神経炎症の重要性が言われている。末梢神経系のグリア細胞であるシュワン細胞も炎症性サイトカインや神経栄養因子などの様々な液性因子を産生・放出することで末梢感覚神経の感作を引き起こすとされていて、シュワン細胞においてこれらの炎症性物質が協調して調節されていることが知られている。 長鎖非コードRNAであるH19は様々な作動原理を通して炎症性疾患に関連し、これまでに様々な細胞腫において多くの液性因子の発現調節を担うことが報告されている。しかし、H19は幅広く炎症性物質の制御に関わるにもかかわらず、標的遺伝子の発現調節機構は個別にしか検討されていなかった。最近、申請者らは、H19がシュワン細胞で神経障害により持続的に且つ劇的に増加していることを明らかにし、更にそのシュワン細胞にレンチウイルスベクターを使用して、H19を効率的に遺伝子導入できる手法を確立した。現在、遺伝子導入を行ったシュワン細胞株に対してRNAシーケンスを行い、発現変化する遺伝子群を同定した。さらに、これらの遺伝子群から神経炎症に関わる遺伝子をバイオインフォマティクス解析から抽出した。今後は、バイオインフォマティクス解析により見出したH19の作用を仲介する可能性があるタンパク質分子の発現やリン酸化における変動をウェスタンブロットにより確認 する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度の前半はCOVID19の蔓延により研究室の立ち入りの制限があったのと、RNAシーケンスの解析に使用したサンプル調整がうまくいかず、時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAシーケンスのデータをもとに行った、バイオインフォマティクス解析により見出したH19の作用を仲介する可能性があるタンパク質分子の発現やリン酸化における変動をウェスタンブロットにより確認する。これらの解析から炎症制御への関与を見出したH19結合分子に関して、H19への結合を阻害するH19アンチセンス核酸により培養シュワン細胞を処理し、炎症性物質の遺伝子発現を測定することで治療候補となる核酸配列を同定する。
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Causes of Carryover |
今年度行う予定であったRNAシーケンスの分析は既に完了しているが、RNAシーケンスのやり直し等により次年度になった時点で解析結果が出たため、今年度は未使用額が生じた。次年度は、海外でのシンポジウムの発表が控えており、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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