2022 Fiscal Year Research-status Report
生体に害の少ない口腔癌に有効な新規抗癌剤候補分子の探索
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21K17135
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
村木 友美 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10899842)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | JCAD / 抗癌剤 / 癌脈管新生 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子標的薬や免疫チェック阻害薬の登場により,従来にない発想に基づいた新たな抗癌剤の開発が期待されています。現在歯科口腔外科領域のみならず,日常臨床の現場で頻用されている抗癌剤の代表的なものの多くは、多様で深刻な副作用を伴います。よって「副作用の少ない人体に無害な抗癌剤の開発」は患者さんの苦痛の除去に大きく貢献します。 抗癌剤はDNAの複製・転写の抑制や、成長因子の活性阻害等人体において極めて重要な機能を阻害することで成り立っていることがほとんどです。一方で、副作用の少ない人体に可能な限り無害な抗癌剤を探索する上で一つのきっかけとなるのは正常時における生命維持にそれ程は重要な機能を果たしていない分子であり、かつ病的な状態においてのみ際立って機能する可能性がある分子であると言えます。本研究では病的な環境下でのみ機能している可能性がある分子のヒトの癌組織における発現様式や、この病的血管関連分子(JCAD)の遺伝子発現を抑えたノックアウトマウスを用いて研究を行い、病的血管関連分子JCADの癌、特に癌脈管新生における役割を明らかにし、新たな抗癌剤開発のきっかけとすることを目的としています。 2021年度に、まずヒトの口腔癌の中でも歯肉癌にしぼってJCADと血管のマーカーであるCD31とで免疫染色を施行し、2022年度は並行してノックアウトマウスを用いた研究も行いました。病的な環境下でも血管新生、および病的血管新生が抑制されているとどのような変化を示すかを調べるため創傷治癒アッセイを行い、JCADが正常な創傷治癒に寄与している可能性を示唆する結果を得つつあります。本研究の主たる目的は癌新生血管におけるJCADの役割を明らかにすることなので、JCADノックアウトマウスを用いて腫瘍移植実験を行いましたが、現在手技や結果の精査をしています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では病的な環境下でのみ機能している可能性がある分子のヒトの癌組織における発現様式や、この病的血管関連分子(JCAD)の遺伝子発現を抑えたノックアウトマウスを用いて研究を行い、病的血管関連分子JCADの癌、特に癌脈管新生における役割を明らかにし、新たな抗癌剤開発のきっかけとすることを目的としています。 2021年度はヒトの癌切除検体を用いた免疫染色を実施し、2022年度はその解析を行いました。またノックアウトマウスを用いた動物実験では、創傷治癒アッセイでJCADが正常な創傷治癒に寄与している可能性を示唆する結果を得つつある一方、腫瘍細胞の移植実験ではいくつかの問題点が明らかなとなったため想定よりも実験の進捗は遅れていると考えております。 以上が、現在の実験の進捗状況を判断しました理由です。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するために、2023年度はヒト癌組織を用いた免疫染色でマーカーを追加したJCADの機能解明を目指す予定です。このヒトでの結果を、今後ノックアウトマウスと培養細胞等を用いて基礎医学的研究で裏付ける実験が必要となると予想されます。
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