2021 Fiscal Year Research-status Report
TGF-β/Rasシグナルを分子標的にした口蓋突起癒合不全制御への挑戦
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21K17159
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青山 剛三 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (00838542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 二次口蓋の癒合 / 口唇口蓋裂 / TGF-β / Rasシグナル / RREB1 |
Outline of Annual Research Achievements |
口唇口蓋裂の発症には様々な要因が関与することが知られているが、とりわけ口蓋突起上皮の動態異常が口蓋裂の発症と大きく関わっている。申請者は口蓋突起上皮のライブイメージング技術により、口蓋突起癒合時の上皮細胞の細胞動態を観察することを可能にしている。本研究はこの技術を応用することで、TGF-β/Rasシグナル経路が口蓋突起癒合における細胞動態にどのような影響を及ぼしているかを解明し、Rasシグナル経路を制御するための標的分子を探索する新しい取り組みである。 初年度は、Ras阻害剤投与群において上記のライブイメージングにより二次口蓋の上皮除去が阻害されることを見出した。静置培養でも同様にRas阻害剤投与群では口蓋突起癒合が抑制され、E-cadherinおよびp63が口蓋癒合面の内側縁上皮に強発現していた。また、Rasシグナルの下流分子であるRREB1に着目し、Rreb1遺伝子は口蓋癒合面の内側縁上皮に特異的に発現し、Rreb1ノックダウン群では口蓋突起癒合が抑制された。これによりRasシグナルおよびRreb1遺伝子が口蓋突起癒合に重要な因子であることを見出した。また、この研究内容を共同執筆者としてDisease Models & Mechanisms 誌に投稿した。 Rasシグナル経路を標的として口蓋突起癒合面の細胞動態の異常を改善することができれば、発症原因が多様な口蓋裂に対して非常に効率的・効果的な治療が可能になると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画書では2021年度において、口蓋突起癒合不全により100%完全口蓋裂を示すTGF-β3ノックアウトマウスを入手し、胎生14日のノックアウトマウス母体にRas作動薬を腹腔内投与することで、口蓋突起癒合不全の回復を確認する予定であったが、TGF-β3ノックアウトマウスを入手が困難であり、レスキュー実験の検証は行っていない。ただし、Rasシグナルの標的分子であるRREB1を用いた上述の実験系を確立したことにより、口蓋突起癒合不全に特異性の高いTGF-β/Rasシグナル分子標的治療法の構築を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は野生型マウス口蓋突起の器官培養においてRasシグナル阻害薬添加群、作動薬添加群ならびに対照群の口蓋突起癒合面上皮よりRNAを採取し、全エクソームのトランスクリプトーム解析を行い、口蓋上皮のRasシグナル特異的な反応を示す分子を検索する。さらに、qPCRにより再現性を確認できた分子についてはin situ hybridizationまたは免疫染色によりin vivoでの発現変化を検証する。 これらのデータを総合的に判断することで、Rasシグナルの標的遺伝子または分子を同定する。同定した標的分子に対する治療薬剤を検索し、上述の口蓋裂癒合不全マウスモデルに投与し、口蓋癒合不全に対する治療効果を検証する予定である。
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Research Products
(1 results)