2021 Fiscal Year Research-status Report
大量化学療法による口腔細菌の膜輸送体の発現変化と口腔粘膜障害発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K17183
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小林 優子 (森川優子) 岡山大学, 大学病院, 医員 (70803188)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 小児がん / 抗がん剤 / 口腔細菌叢 / 歯周病菌 / ミュータンスレンサ球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児がん患者において抗がん剤等の大量化学療法を受けた小児において、口腔内環境が変化し重度の齲蝕や歯肉炎が起こることがすでに知られている。また、同時に大量化学療法を受けている小児においては、免疫機能の低下から著しく歯肉の状態が悪化していることが考えられる。このような患者では、齲蝕および歯肉炎発症に関わる菌およびその菌の生育環境も大きく変わっている可能性が高く、その細菌叢は健常の小児のものとは大きく異なると思われる。本研究ではこれまでに岡山大学病院小児科を受診中で保護者の同意が得られた患児より唾液および歯垢を採取し、通法に従って細菌 DNA を抽出した。得られた細菌 DNA を 用いて、各細菌種に特異的なプライマーを用いた PCR 法にて、検体中に含まれる口腔レンサ球菌、歯周病菌の同定を行ってきた。今回、口腔内細菌の分布を詳しく調査するために得られたサンプルを血液寒天培地に播種した。得られたコロニーから細菌DNAを抽出し、次世代シーケンサーで解析を行った。その結果、術前ではActinomyces 属が全体の60%と一番多く、次いでStreptococcus 属が20%検出された。術後3か月経過した後のサンプルではStreptococcus 属が60%と一番多く、次いでActinomyces 属が40%であった。術前術後どちらにおいてもActinomyces 属の中で Actinomyces naeslundii が最も多く検出されていた。このことから化学療法によって口腔細菌叢に変化が起こっていることが示された。また術前に歯肉炎の発生と進行に関与するActinomyces naeslundii が多く検出されていることから術前術中の口腔ケアが重要であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡山大学病院小児科との連携もとれており、小児歯科を受診する小児がん患者が増加し、各ステージ毎のサンプル数も定期的に確保することができている。採取したサンプルも随時、PCR法による菌の同定を行っており、概ね予定通りに遂行できていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、分離した細菌から、通法に従って細菌 DNA を抽出し、各細菌種に特異的なプライマーを用いた PCR 法にて、検体中に含まれる口腔レンサ球菌、乳酸菌、および歯周病菌の同定を行う。さらに詳細に口腔細菌叢の変化を調査するためにも次世代シークエンサーによる解析も行っていきたい。また、口腔内から分離された菌を用いてバイオフィルム形成能の分析および膜タンパクの解析についても行う予定である。
|
Causes of Carryover |
今回の研究で対象としている大量化学療法の施術がコロナ禍により手術自体が延期になることが多く、想定していたよりもサンプルが得られないことがあった。次世代シーケンサーによる解析はサンプルがある一定数集まった後に解析に出している。サンプル回収が遅れている分の解析はまだ行えていないため次年度使用額が生じている。またコロナ禍で学会がオンラインに変更になったこともあり、旅費負担が少なかったことも原因の1つである。今後は集まったサンプルを次世代シーケンサーに出すことに未使用額を充てたいと考えている。
|
Research Products
(1 results)