2022 Fiscal Year Annual Research Report
大量化学療法による口腔細菌の膜輸送体の発現変化と口腔粘膜障害発症メカニズムの解明
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21K17183
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小林 優子 (森川優子) 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (70803188)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔細菌叢 / 小児がん / 抗がん剤 / 歯周病菌 / ミュータンスレンサ球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児がん患者において抗がん剤等の大量化学療法を受けた小児において、重度の齲蝕や歯肉炎が起こることがすでに知られている。また、同時に大量化学療法を受けている小児においては、免疫機能の低下から著しく歯肉の状態が悪化していることが考えられる。このような患者では、齲蝕および歯肉炎発症に関わる菌およびその菌の生育環境も大きく変わっている可能性が高く、その細菌叢は健常の小児のものとは大きく異なると思われる。本研究は、岡山大学生命倫理審査委員会の承認を受け行った。保護者の同意が得られた6名の患児(3.9歳~11.25歳:中央値6.15歳)の唾液サンプルを用いて得られたコロニーから菌を抽出し,シークエンス解析により菌を同定した。 シークエンス解析では主に9種の菌種が検出された。移植前は Actinomyces 属が最も多く全体の50%を占めていた。次に Streptococcus 属が多く全体の25%であった。それ以降はどのステージにおいても Streptococcus 属が最も多くの割合を占めており,1か月後は33%,3か月後は35%と全体を占める割合も段階的に増加した。 以上の結果から移植1か月後と比較して移植後3か月後において口腔レンサ球菌、歯周病原細菌のほとんどにおいて検出率が上がるため重度の齲蝕や歯周病の発生に関連していると考えられる。特に歯周病原細菌においては日和見菌と呼ばれている Prevotella nigrescens の検出率が高く、将来的に歯周病のリスクが上がると考えられる。 このように移植前と移植後における口腔内の構成細菌は短期間の間に大きく変化しており、生育環境も大きく変わっているといえる。生育環境へ速やかに対応するために口腔内細菌の性状にも変化が起こっていると考えられる。今後は細菌の病原性について追求していきたい。
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Research Products
(2 results)