2021 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害時における携帯型X線発生装置の作業基準の確立
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21K17202
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
岩脇 淳志 明海大学, 歯学部, 助教 (80845660)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線防護 / 被曝線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科的個人識別においてX線画像は有用であるが、災害現場での作業を想定した被曝線量にまで言及した研究はない。また、現場で術者や介助者がフィルムや検出器を固定して撮影をした際の手指被曝線量の研究もなく、術者の現場における撮影限界に関する指針もない。指針が不十分である場合、一人の医師が撮影を続けることで被曝線量が高くなり、健康被害に影響する。X線発生装置の安全な使用のため、X線画像撮影時の散乱線量と、撮影時に検出器を固定する手指の被曝線量を計測し、国際的な線量基準を使用し撮影限度枚数、体数を算出することで国際的な術者や周囲作業者の作業限界に関する指針の一助とすることを本研究の目的とした。 本年度は、目的のうち手指被曝線量に関する実験を行い、学会発表を行った。実際の現場では、ご遺体の口腔内でフィルムや検出器を直接保持してX線撮影することが多いと考えられる。近年、鉛非含有の防護手袋や撮影補助具が開発されているため、防護手袋、撮影補助具の効果について検討を行なった。実験結果から、防護手袋と撮影補助具の使用で約90%近く手指被曝線量を減弱できることがわかった。このことから、術者だけでなく、介助者も防護手袋や撮影補助具の使用が推奨された。 また、本実験で得られた線量を用いて、撮影限界枚数を算出した。限界枚数の算出には、ICRP(国際放射線防護委員会)の基準を使用し、国際的に基準を応用できるようデザインした。防護を施さず撮影フィルム等を口腔内で直接保持した場合、最低で6017枚口内法X線撮影を行うと1日の線量限度に達する結果となった。 今年度は、散乱線量測定実験に使用するため購入を予定していたファントムが廃盤となり、代替機器の選定に苦慮した。令和4年3月に歯科用頭部ファントムを選定し、4月4日に納品された。次年度は、購入した頭部ファントムを用いて散乱線量の測定実験と解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、購入を予定していたファントムが廃盤となり、代替の機器の選定に苦慮した。令和4年3月に京都科学の歯科用頭部ファントムを選定し、4月4日に納品された。令和3年度は、当初予定していた計画を変更し、手指被曝の測定を先に行い、実験結果の解析を進めた。散乱線量測定実験に計画していた時間で手指被曝線量のデータ解析が行えたため、次年度に予定していた学会発表も、手指被曝線量に関するもので行うことができた。 散乱線量測定実験に使用するファントムが納品されたため、散乱線量の測定実験を行う準備段階にある。 以上のことから、当初の計画と比較し若干の遅れをとっているが、実験も準備段階に入ることができたため、今年度終了までに計画に追いつくことができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年3月に発注した散乱線測定実験用のファントムが納品されたため、散乱線量測定の実験準備を進め、実験を行い、実験データの解析を遂行する。令和4年度終了までに、散乱線量の測定と実験データの解析を終了し、散乱線量についての学会発表1件を計画している。 併せて、令和3年度行った手指被曝線量について、論文にまとめ投稿準備をすすめていく。具体的な投稿雑誌は未定であるが、法医学、口腔科学系の雑誌への投稿を検討している。
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Causes of Carryover |
散乱線量測定実験に使用するため、購入予定であったファントムが廃盤となっており、代替の機器を選定するのに苦慮した。ファントム購入費等で確保していた1,339,680円が今年度中に執行できず、次年度へ繰り越し予定であったが、令和4年3月18日株式会社京都科学の歯科用頭部ファントムを選定し、購入費として1,290,300円を使用した。受注販売であり、納品まで期間がかかったため、予算の執行は令和4年度となった。令和4年4月4日納品・購入済み。 次年度請求した500,000円と本年度使用できなかった49,000円を、次年度開催される学会発表用の旅費等に利用する予定であるが、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、国内学会も国際学会もオンラインで行うことが予想されるため、旅費分に計上していた金額も使用できないことが予想される。その際には、データの解析状況も鑑みて、英文校正費や投稿料へ前倒して使用することも検討する。
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Research Products
(2 results)