2021 Fiscal Year Research-status Report
The analysis of proteinuria caused by antineoplastics and the preventative effects with antihypertensive medications using the Japanese medical database
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21K17258
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
清海 杏奈 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (10779929)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医療ビッグデータ / 抗がん剤 / 副作用 / ベバシズマブ / タンパク尿 / 降圧薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、実臨床で集積された医療ビッグデータを用いた研究が世界的に注目されている。本研究は、日本の代表的な医療データベースである国立病院機構診療情報集積基盤(NCDA)に蓄積された診療情報を用いて、2016年1月-2019年6月に、ベバシズマブが入院初回投与された患者2000例を対象とし、ベバシズマブによるタンパク尿発症率および発症の時期を明らかにし、降圧薬の予防投与の有効性を薬剤間で比較することを目的とする。これにより、臨床で汎用される代表的な抗がん剤であるベバシズマブの有害事象であるタンパク尿の発症と予防に関する客観的なエビデンスを得ることができる。性別、年齢、BMI、ベバシズマブ1回投与量及び累積投与量、タンパク尿、ベバシズマブ開始時の降圧薬の種類および併用有無、癌腫、ステージ、初発または再発、合併症、血圧、血清Na、血清K、血清クレアチニン、血清アルブミン、尿素窒素、総ビリルビン、血糖、クレアチニンクリアランスについて横断的に調査する。ベバシズマブの有害事象が生じやすいと考えられる著しい心血管疾患、末梢血管疾患、重症非治癒性外傷、ベバシズマブ投与28日以内の外科的手術、潜在的出血傾向、脳転移、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬、および抗凝固薬の定期投与の有無は交絡因子として精査する。また、患者状態として、Activity of Daily Living (ADL:日常生活動作)、看護必要度、入院時の重症度としてチャールソン併存疾患指数を調査する。タンパク尿に関する重症度判定は、CTCAE, version 5.0に従う。今後、国際的な比較も視野に入れているものの、近年のCOVID-19による影響について、疫学的な検証が必要となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は既に本学および国立病院機構の倫理審査を通過し、現在、抽出されたデータのクリーニング作業が終了しつつある。該当症例数は想定を上回る2624例であり、臨床的、統計的有意差を得るための母数として、十分な規模を有する。得られたデータから各種因子の分布の精査を実施した。主要な患者背景として、性別、年齢、癌腫、癌ステージ、ADLを調査した。また、入院時併存症の精査を実施し、チャールソン依存症疾患指数を用いて重症度分類した。検査値についてはICD-10を用いた抽出を実施後、得られたデータの分布や外れ値の確認を行い、各種ガイドラインやCTCAEに基づく基準値設定、重症度設定を行い精査した。特に、本研究のアウトカムであるタンパク尿に関しては、施設ごとに定性検査、半定量検査、定量検査に分類されていたため、これらを統合させることでアウトカムであるタンパク尿のデータクリーニングを終了した。また、ベバシズマブに関連するとされる高血圧に関しても検査のタイミングを考慮した上でクリーニングを終えた。医薬品に関しては薬価基準コードを用いて降圧薬を抽出し、薬効別に分類した。研究期間内に処方された降圧薬の処方期間と時期を層別化することで、アウトカムに及ぼす影響を考案した。また、ベバシズマブ以外に使用された抗がん剤に関しても調べ、タンパク尿の発症に影響を及ぼすか調査した。現在までにほぼ全ての変数に関してクリーニングが終了しており、進捗状況は予想通りに進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにデータのクリーニングがほぼ終了しており、今後は統計解析を開始する。具体的には、各種変数の単変量回帰分析、その結果と臨床的有用性に基づく変数決定ののち、多変量回帰分析を実施し、ベバシズマブ起因性の蛋白尿の発症に及ぼすリスク因子を明らかにする。また、降圧薬の処方なし、レニンアンギオテンシンアルドステロン(RAA)系抑制薬、そして非RAA系抑制薬を服用している患者の3群に層別化し、Cox回帰分析を行う。また、各種降圧薬の服用有無およびその種類によるタンパク尿発症の抑制効果をカプランマイヤーの生存曲線により明らかにする。これらの結果に基づき、論文執筆、投稿、国際学会での発表を予定している。今後、COVID-19の影響を検証した上で、より長期のイベントを観察し、国際比較も行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究を遂行する上で最低限必要だった物品に関しては購入が完了しているものの、次年度中に追加データの購入の可能性があり、さらに本研究成果発表に関連する国際学会の参加費及び旅費等に充てる予定である。
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