2022 Fiscal Year Research-status Report
カルニチン欠乏モデルマウスにおける脂肪酸毒性評価と腸管への影響の検討
Project/Area Number |
21K17272
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小牧 祐雅 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (50839438)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カルニチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では脂肪酸毒性の評価を脂肪酸の種類に着目すること、脂肪酸代謝障害モデル動物を利用することによって実施することに特徴がある。今回申請者が目指しているモデルは、飼料中の脂質組成を変えることでの生体影響を評価するモデルの開発であり、独創的な点である。 予備的検討として、脂肪酸代謝異常マウス (juvenile visceral steatosis : JVS マウス, 遺伝的にカルニチンが低下) に対し、脂質主成分がリノール酸である大豆油を4%含有しているAIN-93に、1)リノール酸(シス型、多価不飽和脂肪酸)、2)オレイン酸(シス型、一価不飽和脂肪酸)、3)ステアリン酸 (飽和脂肪酸)、4)エライジン酸(トランス型、一価不飽和脂肪酸)の各脂肪酸を重量比1%分の糖質と置き換える形で添加した飼料を6週間投与する実験を行い、小腸・大腸の組織学的スコアリング及び便中alkaline phosphatase (ALP) 測定での腸炎の評価を行った。ステアリン酸群では小腸・結腸共に組織学的評価で他の群よりも組織学的スコアが高く、便中ALPも高い傾向だったが、その影響の個体差が大きかった。個体差の影響が負荷量と観察期間によると考え、AIN93Mにステアリン酸を重量比2%分の糖質と置き換えて添加した飼料をより長い観察期間の8週間投与すると、JVSマウス群でday21をピークに血便を認め、day21、day56いずれの時点でも有意に組織学的炎症所見を認めたが、やはり個体差は大きかった。飽和脂肪酸であるステアリン酸含有食事摂取でのJVSマウスで腸炎を認めており、脂肪酸の種類によって毒性が異なることが示唆されたが、個体差を説明する因子についての検討が必要と考えている。昨年度・今年度の結果を通じ今回の実験系は個体レベルでの種々の長鎖脂肪酸の毒性を評価するモデルになりうる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、以下の2点を目的としている。 i. カルニチン欠乏モデルマウスにおける脂肪酸毒性を、脂肪酸ごとに評価する。 ii. カルニチン欠乏モデルマウスにおける腸炎の評価を行うことで、カルニチン欠乏に伴う遊離脂肪酸の、腸管に対する影響を確認する。 カルニチン欠乏モデルマウス(JVSマウス)において、腸管に対する影響は未だ検討されていないため、脂肪酸の種類を変えること、特に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が腸管を始めとした臓器にどのような影響を与えるかを検証したく、食事中の脂肪酸の種類を変えることで、まずは脂肪酸の質による毒性の影響を評価することとした。その結果、統計的な確認には至っていないが、飽和脂肪酸であるステアリン酸添加群では小腸・結腸ともに組織学的評価で他の群よりも組織学的にも腸炎をきたしており、飽和脂肪酸により小腸炎・結腸炎が誘発されている可能性があると考えられる。 特定の種類の脂肪酸によって、病変が起こる可能性は示唆されるが、個体差が大きいことも確認している。個体差の要因について、腸内環境についての検討を試みている。食事中の多価不飽和脂肪酸が腸内細菌によって代謝される経路が同定されており、腸内細菌により生成される短鎖脂肪酸が腸内環境を酸性に保ち、危険な病原菌などが腸管から侵入するのを防ぐことも知られている。長鎖脂肪酸に関して、トランス脂肪酸を生成する腸内細菌が肥満や高血糖などの代謝疾患を悪化させることも既に報告されている一方、腸に対する影響は検討されていない。 今後は、抗生剤を投与し腸内細菌叢を変動させたJVSマウスにおける腸管への影響を検討した上で、飼料の脂肪酸含有量も増量させ、再度各種脂肪酸 (特にリノール酸、オレイン酸、ステアリン酸) 添加飼料投与による腸管・その他臓器 (心臓・肝臓等) での上記に対する影響を、統計学的処理を踏まえて確認する予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
通常用いる飼料 (AIN93M) で飼育している4週齢のJVSマウスに抗生剤 (アンピシリン・バンコマイシン) を1週間投与した上で経時的に観察し、対照群 (抗生剤を投与しない群) と比較した上で、摂食量、体重、便潜血検査を行う実験を行い、JVSマウスにおける腸管への影響を検討する。その上で、個体数を増やして、各群 (疾患マウス群、野生型マウス (対照) 群) に、4週齢から、再度各種脂肪酸 (特にリノール酸、オレイン酸、ステアリン酸)添加飼料給餌を行う。経時的に観察し、摂食量、体重、便潜血検査を行う。12週齢にて、麻酔下にて心臓採血を行い、臓器(腸管、肝臓、心臓、脳、脂肪組織、血管)を採取し、脂肪酸添加による腸管・その他臓器での上記に対する影響を、統計学的処理を踏まえて確認する予定としている。厚生労働省が定めた飽和脂肪酸の目標量は、摂取エネルギー比率で7%以下(重量比で3.5%程度)と設定されていることから、2022年度は各種脂肪酸 (リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸)を重量比2%ずつ、糖質と置き換える形で添加し、脂肪酸の質による毒性の影響を評価したが、個体差も認めたことから、2023年度は、各種脂肪酸 (リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸)を重量比4%ずつ、糖質と置き換える形で添加し、脂肪酸の質による毒性の影響を評価することとしている。
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Causes of Carryover |
動物実験施設の移設に伴い動物飼育数の縮小を余儀なくされたため、前年度の動物飼育数を縮小せざるを得なくなり、前年度の飼育費が縮小した結果、次年度使用額が生じた。今年度に、主に動物飼育費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Clinical features of obscure gastrointestinal bleeding undergoing capsule endoscopy: A retrospective cohort study2022
Author(s)
Komaki Y, Kanmura S, Yutsudo K, Kuwazuru K, Komaki F, Tanaka A, Maeda H, Arima S, Tanoue S, Sasaki F, Hashimoto S, Horiuchi M, Ido A
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 17
Pages: e0265903
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] 索状物の関与が疑われた狭窄型虚血性小腸炎の1例 . 日本消化器病学会雑誌119:566-572, 20222022
Author(s)
喜山甲菜, 田中啓仁, 小牧祐雅, 佐々木文郷, 上村修司, 田上聖徳, 又木雄弘, 東美智代, 大塚隆生, 井戸章雄.
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Journal Title
日本消化器病学会雑誌
Volume: 119
Pages: 566-572
DOI
Peer Reviewed
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