2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment and clinical application of a method for estimating pathogen transmission routes based on whole genome sequences and patient epidemiological information
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21K17280
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
藤倉 雄二 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 内科, 准教授 (60598796)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 分子疫学解析 / 全ゲノムシーケンス / 次世代シーケンサー / ベイズ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はこれまで当院で経験した薬剤耐性菌アウトブレイクのレビューを行った。特にアシネトバクターについては、薬剤耐性菌を含めた過去12年間の保存菌株を対象として、簡便な遺伝子タイピング法(POT法)を用いて院内でのクローンの移り変わりを確認した。このなかで、特に薬剤耐性を獲得しやすいクローンが当院における薬剤耐性アシネトバクターのアウトブレイク以前から定着していることが確認され、アウトブレイクの際にはこのクローンが優勢となり院内で広く検出されていることが確認された。この結果については原著論文を作成し、投稿中である。 さらにこの過程で院内で過去に発生した薬剤耐性アシネトバクターのアウトブレイクを同定し、この際に保存された菌株の全ゲノムシーケンスを実施した。今後、検体収集日や感染可能時期といった疫学情報については現在の理解を踏まえた上であらためてよくレビューする必要があるが、これが終了した後、配列精度の検証、塩基多型の抽出法、ベイズ理論などの数理モデル(プログラムパッケージ)を利用した伝播経路予測図作成について、まずは既に成功した手法(BadTrIPとBEASTを用いた手法)により検証を行う。本研究ではこれ以外の最適なワークフロー/パイプラインも検証する予定としている。それについては複数の候補となる手法を選定している過程である。なお、これらの結果については学会、論文等で報告の予定である。 また、本研究の重点項目として設定した新型コロナウイルス感染症のクラスターについては、現在複数のクラスターについて検体の収集が終了したところであり、一部については解析を実施している。今後学会・論文等で報告の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要な検体が収集できており、概ね順調に進展している。ただし、全ゲノムシーケンスが解析できる機器は限られており、本研究以外でも新型コロナウイルス変異株解析などを別途行っているため、研究の進捗に影響している。また、バイオインフォマティクス講習など、最新の解析手法を学ぶ機会が新型コロナウイルス感染症流行により減っている(web開催のみになっており、ハンズオンセミナーが少ない)ことから、学外のバイオインフォマティシャンとの交流機会が持てない点で不安が残る。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、次年度で計画通り各種病原体の全ゲノムシーケンスを実施するとともに、本研究の主題である伝播経路予測図を作成する最適な方法を検討・構築することをすすめる。病原体ごとに各種のパラメータを設定する必要があり、ベイズ理論だけでなく遺伝学の理解も含め幅広い学習も必要である。
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Causes of Carryover |
特にシーケンサーに必要なカートリッジについては使用期限が標準的には2ヶ月程度であり、解析する病原体が整ってから物品の購入手続きを行っている。病原体入手時期の関係により購入については遅れが生じているため、年度の予算を使用しきれなかったが、まだ解析できていない病原体が複数あるため、次年度購入に充てることを想定している。
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