2023 Fiscal Year Research-status Report
Establishment and clinical application of a method for estimating pathogen transmission routes based on whole genome sequences and patient epidemiological information
Project/Area Number |
21K17280
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
藤倉 雄二 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 内科, 准教授 (60598796)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 分子疫学解析 / 全ゲノムシーケンス / 次世代シーケンサー / ナノポアシーケンサー / ベイズ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は昨年度に引き続き院内感染の原因微生物として新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と薬剤耐性アシネトバクターを対象として、ベイズ推定による伝播経路予測プログラムパッケージ群(BadTrIPとBEAST2)を用いた、院内アウトブレイク(クラスター)解析について研究を進めた。 SARS-CoV-2については、当院内で発生した2回のクラスター(8症例と11症例のクラスター)で発症時期や検体採取日、ゲノム情報をもとに伝播経路予測図を作成した。うち1個のクラスターでは、抗原検査により陽性判定されてたため遺伝子が採取されておらず、ゲノム情報が欠失している検体が多く、この場合には計算過程で伝播の事後確率の重み付けが不十分であり、有効な伝播経路予測が作成できなかった。妥当性の高い伝播経路の推定には十分なサンプルのゲノム採取が必要であることが裏付けられた。 薬剤耐性アシネトバクターについては昨年度課題としていたパラメーター設定を工夫したところ、伝播経路予測図の作成が可能となった。作成した伝播経路予測図の妥当性検証を行い、ごく一部の伝播については記述疫学で予測された経路と異なる部分を見いだした。伝播に係るリスク因子も統計解析を行ない、特に入院期間が長い場合に他患者に伝播するリスクが高まると推定された。さらに伝播(感染者、非感染者)に係るリスク因子を検討中である。これらの結果については今後学会発表ないしは関連雑誌の予定である。 最も妥当性の高い伝播経路予測図作成のためには、さらに推定モデルを複数用意し、実臨床での記述疫学との比較が求められる。今後の課題と考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度課題にした、対象とする病原体が不足している点が懸念点である。現状でも複数の病原体、特にSARS-CoV-2の解析はできているが、さらに様々な病原体(様々な伝播様式)を検証することで、モデル構築の妥当性を検証したい。 さらに、現状使用している伝播経路予測図構築のプログラムパッケージ群(BadTRiPとBEAST2)以外でも、いくつかの伝播経路予測を行う手法が報告されている。これらについても検証に加えることでより信頼性の高い報告が可能になると考えている。 以上の点でやや遅れている、と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
既に解析が終了したSARS-CoV-2と薬剤耐性アシネトバクターのアウトブレイク(クラスター)における伝播経路予測及びリスク因子の推定結果については学会報告ないしは論文作成を進める。 引き続き、新規に発生した他の病原体の院内感染事例については伝播経路図の作成を行い、種々の病原体における有効性を確認する。 さらに、現状で用いている推定図作成プログラムパッケージ群以外を使用して、完成した伝播図の比較を行ないたい。
|
Causes of Carryover |
残額については次年度の物品購入や論文投稿・掲載費に充てることを想定している。
|