2021 Fiscal Year Research-status Report
RSV感染症予防に関する研究:抗体製剤耐性株判定法確立とRSVゲノム長期変異解析
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21K17283
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
江川 和孝 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 研究員 (10827257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | RSウイルス / 疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
RSV感染症は国内では、夏から秋に流行する傾向にある。しかしながら、2021年は1月から患者報告数が増加し、例年と比べて大きく異なる流行期を認めた。RSV感染症の流行期には重症化しやすいハイリスク児を対象にパリビズマブを用いた重症化予防が行われる。RSV感染症流行の状況や要因を把握する意義は大きい。 令和三年度は、2021年に発生した例年と異なる時期におけるRSV感染症の流行要因を探るため、過去10年間にわたる大阪市内の患者発生状況の分析、ならびに2021年第1週以降に検出されたRSVの分子疫学的解析を行なった。結果、2021年における大阪市の患者報告数は、冬から春にかけて増加しており、患者年齢は従来よりも高い傾向にあった。また、RSVの遺伝子型は、近年の国内で優勢を示す型(RSV-A ON1、RSV-B BA9)と一致した。2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が発生し、マスクの着用、手洗いの勧奨、ならびにフィジカル・ディスタンスの確保等が実施された。これらの感染予防対策は、乳幼児のRSV感染の減少にも効果的であったと考えられる。それに伴うRSV感受性乳幼児の増加が、2021年春のRSV感染症流行の一因であった可能性がある。RSV感受性者の蓄積は、季節的流行を認める従来の遺伝子型のRSVが季節に関わりなく流行する原因になりうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和三年度は、2021年に発生した季節外のRSV感染症流行に関する疫学解析研究を実施したことから、計画していた研究に遅れが生じている。令和三年度の研究は、当初の計画にはなかったものの、RSV感染症流行要因の理解に繋がる知見を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年に検出されたRSVの遺伝子解析を引き続き実施するとともに、2020年以前に検出されたRSVについても遺伝子解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画になかった研究を実施したことや令和三年度の途中に所属機関を変更したことから、研究に遅れが生じたため。 当初計画していたRSVの遺伝子解析研究を行うために、費用を計上する。
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