2023 Fiscal Year Annual Research Report
Neutrophil extracellular traps contribute multiple organ failure after traumatic brain injury
Project/Area Number |
21K17324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 千裕 京都大学, 医学研究科, 助教 (40894754)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 法医病理 / 頭部外傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭部外傷の予後規定因子の一つに遠隔臓器障害がある。局所障害である脳損傷が他臓器へ影響を与える要因には神経調節機構の破綻や炎症の波及などがあるが、その複雑な臓器連関メカニズムについてはまだ分かっていないことも多い。好中球細胞外トラップ(以下 NETs)を始めとしたDAMPsは重篤な疾病、外傷時に障害組織から放出され、多臓器障害の原因となるとされる。我々は頭部外傷に続発する多臓器障害へのNETsの関与を解明することを目的とした。研究期間中には以下のことを実施した。①ヒトの頭部外傷を模した再現性のある致死的外傷性脳損傷(以下TBI)モデルマウスを作製した。②TBI後の臓器変化を横断的に観察し、肝や肺では急性期と亜急性期の二峰性に炎症などの臓器障害が発生する一方で、腎臓では臓器障害が生じず、TBIに対する臓器ごとの耐性や経時的変化の差異が明らかとなった。③TBIにおける脳局所でのNETs形成を確認した。しかしながら、当初の仮説と異なり、頭部でのNETs形成による諸臓器への影響を見出すことができなかった。④TBI後にはDAMPsの一つであり、脳損傷に対する有効な治療標的と考えられているHMGB1が血中へ漏出し、全身諸臓器でもHMGB1に対する遺伝子発現量増加が確認された。⑤TBIマウスに抗HMGB1抗体を投与したところ、神経炎症は抑制される一方で、末梢臓器ではTBI後の炎症が増悪した。⑥HMGB1はマクロファージを介した脳損傷関連末梢免疫抑制に関与しており、HMGB1はTBI後の中枢と末梢で正反対の役割を果たしていることが示唆された。これらの研究成果により、TBI後のDAMPsを介した複雑な臓器連関メカニズムの一端が明らかになったとともに、局所に対する有効な治療が他臓器に予想外の結果をもたらすことを示した。本研究から頭部外傷に対するより安全な治療戦略の開発に繋がることが期待される。
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