2022 Fiscal Year Research-status Report
死後経過時間推定のための組織学的・分子細胞学的検討
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21K17325
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中林 ゆき 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (30795307)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死後変化 / 死後経過時間 / 海馬 / 免疫組織学的染色 / プロサポシン / 介在細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学の現場において、ご遺体の死後経過時間は主に死体現象の発現程度により推定される。しかし周囲の環境等により大きく左右されるため正確な推定が困難であることもしばしばである。申請者は、脳の死後における組織学的・分子細胞学的変化を観察することにより死後経過時間推定方法を開発することを目的とし、ラットを用いた動物実験を行っている。 令和4年度では、先行実験より観察期間を細かく、長く設定し研究を進めた。即ち、8週齢Wistar雄ラットを炭酸ガス吸入により安楽死させ死後に21°Cに設定した恒温庫へ静置し、3時間・6時間・12時間・1日間・2日間・3日間・5日間・7日間・10日間後に取り出し(各 n=1)、これらに死後直後のラットを加えた10匹から各臓器(脳・脊髄・肺・心臓・肝臓・腎臓・腸管・膵臓・脾臓・精巣・胸腺・大腿筋)を採取した。各臓器は半切し、組織学的観察用にホルマリン固定するものと、タンパク質の量的観察用に瞬時に冷凍保存するものに分けた。 組織学的観察について、死後脳の海馬(CA1領域)において、介在細胞が錐体細胞よりその形状を長く維持することが前年度までの実験で確認されていたが、今年度は前述の通り観察期間を増やし再検討している。 タンパク質の量的観察について、まずは採取した組織のうち脳をそれぞれ全量ホモジナイズしタンパク質濃度をBCA protein assayにより求めた。その後、western blottingによりまずはGAPDHおよびprosaposin(神経栄養因子)について死後の経時的量的変化を観察した。先行研究にある通り、経時的に減少していることが確認できた。この他のタンパク質・臓器に関しても同様の実験を追加する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度と同様申請者の一身上の理由により研究エフォートが一時的に減少していたため、予定していた研究を進める時間が確保できていなかった。 また、申請時に先行研究で使用していた実験機材や試薬等が販売終了等で一部手に入らず代替品で進めることとなり、実験条件の調整に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
死後脳においてなぜ介在細胞がより長く形を保つのかについて、検討を重ねたい。 死後のタンパク質量的変化については、対象タンパク質を増やして観察する。 また、ラットの死後静置条件を変更し、対象臓器についても脳以外へ拡大して死後経時変化を検討する。 実験結果はとりまとめ、学会発表や論文作成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究の遅れから、実験動物のn数を増やしたりや条件を変えたりする実験を行えていないため、申請時に計画していたよりも今年度の動物購入数や飼育数、試薬等の使用数が少なかった。実験条件の整備等が進んできているため、翌年度には今年度までに予定していた実験も行える見込みであるため、「次年度使用額」を使用させていただく予定である。
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