2023 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症に対する馬介在療法プロトコールの開発に向けて
Project/Area Number |
21K17394
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Research Institution | Naragakuen University |
Principal Investigator |
中田 修 奈良学園大学, 保健医療学部, 助教 (20880991)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 馬介在療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
馬介在療法は専門家による指導の下で馬の動きを利用して機能的な成果を得ることを目的としており、身体や精神に障害のある人に対して一定の効果があることが徐々に明らかとなってきている。本研究では、自閉スペクトラム症児を対象に主観的な指標として「POMSⅡ日本語版」を用いてストレスのチェックを行うことに加えて、客観的な指標として「唾液αアミラーゼ活性によるストレスの評価」「指尖容積脈波法による自律神経機能の評価」を実施すること通して馬介在療法の効果を検証し、今後の介入プロトコルの作成の一助とすることを目的としている。過去10年のランダム化比較試験による研究結果を検討したところ、馬介在療法の効果ではバランスの改善に関して最も多く述べられていた。そのほか歩行機能や心肺機能の改善,QOLの向上も確認されていた。一方、自閉スペクトラム症児に対する馬介在療法の生理学的指標を用いた効果検証はほとんどなされていなかった。 我々の結果から現時点では、POMSⅡを用いた指標に関しては10名程のデータではあるが、下位尺度の怒り-敵意,活気-活力,およびTMD(総合的気分状態得点)で,対応のあるT検定を用いて有意な効果が認められている(p<0.05)。POMSⅡマニュアルによれば、TMD得点が高い場合「現在,情緒機能に関する問題を抱えている」とされる。従ってTMD得点が馬介在療法後に有意に低下しているということは、ASD児の情緒機能の改善に効果的であったことを示唆している.一方で「唾液αアミラーゼ活性によるストレスの評価」「指尖容積脈波法による自律神経機能の評価」では、現時点では改善の傾向はみられるものの有意な効果がみられているとはまでは言えない。今後対象者数を増やすことで、データの信頼性を向上させることを試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID19の感染状況は昨年春から落ち着きを取り戻したが、研究協力施設で飼育されていた馬介在療法用の馬が死亡したために研究が中断していた。ただし、今年の1月に新たな馬を購入し3月をめどに慣らし乗馬を行い、4月から順次馬介在療法を再開している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在約12名でデータ収集が進行中あるいは終了している。研究協力施設の責任者と相談しながら、できるだけ多くの参加者を募る予定であり、得られたデータの解析も並行して行うこととしている。ただし研究期間の延長が必要ではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度は感染状況が落ち着いたので国際学会への参加が可能となったが、馬の死亡による研究の遅れが影響し、対象者の人数が計画より大幅に減少した。本年度は結果分析の効率化のために新たに研究協力施設にPCを設置する予定であり、ある程度の期限を設けて対象者を限定し得られた結果を分析した上で、学会での発表や研究報告書の作成を行う。
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