2022 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患の動的肺過膨張に対する呼吸筋ストレッチの効果
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21K17453
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川内 翔平 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (80827965)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 動的肺過膨張 / 呼吸困難感 / 呼吸筋ストレッチ / 呼吸リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では疾患の特徴である呼気の制限によって,空気を吐ききる前に次の呼吸が開始されることで肺に空気がトラップされ,労作時の呼吸数増加に伴い肺が過膨張する.これを動的肺過膨張と呼び,呼吸困難感の要因とされている.この動的肺過膨張に対する呼吸筋ストレッチの効果は明らかになっていない.先行研究では1回の呼吸筋ストレッチによっても即時的に呼吸機能等が改善すると報告されているため,まず1回の呼吸筋ストレッチによって動的肺過膨張が改善されるかを今年度に検討した. 現在までにCOPD患者26例の取り込みが終了した.対象者はベースライン検査をおこなった後に,呼吸筋ストレッチの前後に行うアウトカム評価として安静時および20回,30回,40回/分の過呼吸後の最大吸気量(IC)を測定した.安静時ICを静的肺過膨張,各過呼吸後のICおよび安静時からのIC減少量を動的肺過膨張の指標とした.ストレッチには呼吸筋専用のストレッチ体操とPNFストレッチを用い,先行研究の方法に従った.呼吸筋ストレッチ後に安静時ICが臨床的意義のある最小差の0.2L以上増加した群を改善群とし解析した. 呼吸筋ストレッチの前後比較においては各指標に有意差は示されなかった.非改善群に比べて改善群は安静時の%ICが低値である傾向が示された.改善群では介入後に安静時ICの増加を示したが,各過呼吸後のICは増加を示さず,IC減少量においてはむしろ介入後にさらなる減少を示した. 本研究によって静的肺過膨張が著明な患者に対しては1回の呼吸筋ストレッチによって即時的な肺過膨張の改善が得られる傾向が示された.しかし,同時にストレッチによって深く緩徐な呼吸パターンへ変化するためか,呼吸のペースが定まっている過呼吸法の動的肺過膨張測定上では動的肺過膨張は呼吸筋ストレッチ後に悪化するように結果が示される可能性が本研究より示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度中は研究代表者の所属変更・転居が研究の進捗の遅れに影響したと考える.実際には新たな所属先・転居先に関係する研究協力施設で研究を開始するに至ったが,当該施設への移動に時間を要するため当初予定していた頻回かつ長期間の介入が困難となり,研究方法を一部変更した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は動的肺過膨張に有効かつ自宅で患者自身が実施できるような機器を用いた呼吸筋ストレッチ等を検討し,動的肺過膨張に対する呼吸筋ストレッチの長期的介入の効果を検討したいと考えている.また,今後の課題としては2022年度より研究を実施している研究協力施設のセラピストとも連携し,より多くの対象者の取り込み,効率的な評価・介入を実施していきたいと考える.
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Causes of Carryover |
2022年度に研究代表者の所属先変更・転居に伴い新たな研究協力施設で研究を開始するに至り,現在約7か月しか経過していないため次年度使用額が生じた.当該の研究協力施設が遠方であるため2023年度分は主に交通費として使用し,当該年度中に使用する予定である.
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