2021 Fiscal Year Research-status Report
呼吸が運動学習過程に及ぼす効果とその神経基盤の解明
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21K17459
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
岩部 達也 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 助教 (60590677)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 呼吸 / 運動学習 / 運動関連領野 / 脳波 / 自律神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸の頻度や深さの調整はリハビリテーション分野において呼吸機能を高めるために用いられる一般的な介入である。その一方で、呼吸に関与する四肢の運動機能に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究の目的は、深呼吸が手指の運動学習やその保持へ及ぼす影響とその神経基盤を神経生理学的な手法(脳波計、自律神経機能検査装置等)を用いて明らかにすることであった。2021年度には、示指外転運動に伴う運動準備電位が短時間の深呼吸課題によって変動するかに焦点をあてて研究を進めた。まず、示指外転筋力を測定する装置をロードセルを用いて作成し、被験者にその値をモニタリングしながら一定強度の示指外転運動を行わせることで、示指外転運動に伴う第一背側骨間筋の筋電図をトリガーとした運動準備電位が生じるかを検証した。その結果、運動準備電位の前期成分、後期成分、いずれの電位も十分に観察できることを確認した。また、医療用カプノメータによる呼気二酸化炭素濃度や心電図を脳波計と同期させるためのシステムを構築して、許容できる遅延での脳波計への取込を可能とした。これにより呼吸や心拍変動と運動に関連した脳活動と関連性を検討するための解析が可能となった。上記の実験環境が整ったため、示指外転運動に伴う運動準備電位が短時間の深呼吸課題によって変動するについて、健常被験者を対象とした実験を開始した。現時点で複数名の被験者からデータを得ているが、短期間の深呼吸介入で運動準備電位の前期成分、後期成分、いずれの電位も深呼吸課題後に増大するという仮説どおりの結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大によって研究に必要な機器の納品が遅れたこと、被験者の実験参加に一部制限があったことが主な理由として挙げられる。その一方で、計画していた研究課題を実施するための研究環境を整えて、本実験に着手することができた。現時点で、少数ではあるが本研究の仮説を支持する知見が得られている。今後は、対象者数を増やし、これらの知見を集積していく予定である。以上により、本研究の進捗はやや遅れているという判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は示指外転運動に伴う運動準備電位が短時間の深呼吸課題によって変動するかを明らかにするための研究において対象者数を増やし、研究を完成させる。また、呼吸関連のパラメータ(呼気二酸化炭素濃度、呼吸数)や心拍変動に由来する自律神経活動の変化と運動に伴う脳活動との関連性についても解析する。その後、短時間の深呼吸課題が運動学習効果に及ぼす影響やその神経基盤を明らかにするための実験に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
運動学習課題に関わる研究準備として姿勢保持装置の作成やPCおよびモニター等の周辺機器を準備する必要があったが、2021年度の研究費残額での購入ができなかったため、次年度予算で購入することとした。また、COVID-19の蔓延により、研究の進捗が遅れたことにより研究発表および謝金を支出できなかったために次年度使用額が生じた。次年度は、2021年度に購入を見合わせた物品を購入し、研究を進めて必要な謝金や研究発表に伴う旅費を支出する。その他については当初計画に沿って助成金を使用する予定である。
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