2022 Fiscal Year Research-status Report
不動化で生じる痛覚閾値低下の解明と情動系神経回路に対する治療アプローチの可能性
Project/Area Number |
21K17465
|
Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
岸川 由紀 西九州大学, リハビリテーション学部, 講師 (30783360)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 慢性疼痛 / ドパミン / 側坐核 / 情動 / D2受容体 / 痛覚閾値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中脳辺縁系ドパミン神経路を含めた神経機構に焦点を当て、慢性疼痛の心理的要因と痛覚閾値の低下との関連性について調べることを目的としている。片側後肢の足関節を4週間固定し不動化したマウスは、von Freyフィラメントの刺激により固定側の足部の痛覚閾値低下が生じた。腹側被蓋野の投射先である側坐核の中脳辺縁系ドパミン神経系と痛覚閾値の変化の関係を調べるため、足関節不動化マウスの足部に刺激を加えた際の側坐核ドパミン放出量をin vivoマイクロダイアリシ法により解析し、ドパミン神経活動を調べた。このとき、固定側の足部に痛みを感じる強さでvon Freyフィラメントの刺激を行うと、側坐核のドパミン放出量が低下した。さらに、足関節不動化マウスにおいてもドパミンD2受容体が痛覚閾値低下に影響しているかを確認するため、ドパミンD2受容体拮抗薬を側坐核に灌流し、側坐核のドパミン放出量と痛覚閾値の変化を測定したところ、足部von Freyフィラメントの刺激によって側坐核ドパミン放出量が増加し、痛覚閾値低下が改善することを確認した。しかし、その結果は、片側後肢の足関節を4週間固定したラットにおける側坐核への同濃度のドパミンD2受容体拮抗薬灌流時と比較すると、同条件のマウスでは痛覚閾値低下の改善の反応性に乏しく、非常に高い濃度を必要とした。また、コントロールとして足関節を固定していないマウスに対し側坐核にドパミンD2受容体作用薬を灌流したところ、拮抗薬と同様に非常に高い濃度で痛覚閾値の低下が確認された。このように片側後肢の足関節4週間固定によるラットとマウスでは、側坐核のドパミンD2受容体の作用による痛覚閾値の反応性に違いが認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、片側後肢の足関節4週間固定ラットの側坐核へのドパミンD2受容体拮抗薬灌流による痛覚閾値低下の改善について、片側後肢の足関節4週間固定マウスで同様の結果を再現する予定であったが、同濃度のドパミンD2受容体拮抗薬では痛覚閾値低下の改善が乏しく、コントロールマウスへのドパミンD2受容体作用薬効果の再現についても非常に高い濃度が必要であった。そこで、マウスの足関節を4週間固定する際の条件を変更し、ドパミンD2受容体拮抗薬に対する痛覚閾値低下の改善を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、片側後肢足関節固定により痛覚閾値低下が生じたD2-Creマウスにおける側坐核へのドパミンD2受容体拮抗薬灌流による痛覚閾値低下の改善を確認した後、側坐核のドパミン神経の病態変化と疼痛閾値低下の関係をさらに詳しく調べるために、D2-Creマウスを用いて、足関節不動化による痛覚閾値低下状態での側坐核のドパミンD2受容体の活性もしくは抑制による痛覚閾値の変化を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
マウス用電子痛覚測定装置を購入する予定であったが、以前実施した足関節不動化ラットでのvon Frey filament試験による痛覚閾値低下の改善とマウスの痛覚閾値低下の改善の数値が大きく異なったため、マウスの飼育条件を変更しながら痛覚閾値低下の反応性を確認することになった。そのため、従来通りにvon Frey filamentを使用した痛覚閾値検査を行った。次年度は、D2-Creマウスに灌流するアデノ随伴ウイルス(AAV)とそれに関連した装置の購入、論文掲載料、学会発表経費、研究継続に必要な物品費などを予定している。
|
Research Products
(1 results)