2021 Fiscal Year Research-status Report
がん悪液質に対する運動によるエピジェネティクス制御に着目した治療法の開発
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21K17481
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Research Institution | Osaka Health Science University |
Principal Investigator |
田中 稔 大阪保健医療大学, 大阪保健医療大学 保健医療学部, 准教授 (00735508)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイオカイン / IL-15 / 運動 / エピジェネティクス / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者における下肢筋量減少の予防は手術などのがん治療後の身体機能の回復促進につながり,要介護移行や生命予後改善の観点からも重要課題であると言える.がん悪液質とは,がんの進行に伴って生じる骨格筋量減少を特徴とする代謝異常症候群であり,生命予後に関わる.がん悪液質の予防・進行抑制の一部には,習慣的な運動が有効とされ,その機序として,運動により骨格筋から分泌されるサイトカイン(マイオカイン)が,関与している可能性が考えられる.マイオカインの一つであるinterleukin-15 (IL-15) は,細胞老化・代謝制御において中心的役割を担うSirtuin1 (SIRT1) を活性化させることで,骨格筋の代謝を活性化させる.さらにSIRT1は,ヒストン脱アセチル化酵素としてエピジェネティックな遺伝子発現制御に関連する.そのため,IL-15を介してSIRT1を活性化させることで,エピジェネティックな遺伝子発現制御に関与するとされ,運動効果を記憶(Metabolic Memory)させることで,習慣的な運動の効果が筋内に蓄積・記憶され,筋萎縮を抑制する可能性がある.そこで本研究では,運動で筋から分泌されたマイオカインにより,習慣的な運動の効果が蓄積され,運動の効果が骨格筋に記憶されること,すなわち骨格筋におけるMetabolic Memoryの一翼を担うという仮説を証明することを目的としている.昨年度は,IL-15遺伝子改変(過剰発現:TGおよびノックアウト:KO)マウスに対して全身運動を実施し,形態学的・生化学的な検証を実施し,IL-15とSIRT1の運動による関連性を検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の初年度の計画に沿って,IL-15TGおよびKOマウスに対して運動を実施した. 結果として,IL-15TGマウスは,通常飼育群に対して,運動群で骨格筋量の変化は見られなかった.一方で,IL-15KOマウスでは,運動実施群で通常飼育群に比較して,下肢骨格筋(腓腹筋)の骨格筋量/体重比が有意に低下していた. 下肢骨格筋(腓腹筋)の結果から,IL-15が運動時の骨格筋量維持に必要な因子であることが示唆された.これら形態的な変化の原因を解明するため,骨格筋のエピジェネティクスに関する網羅的な解析を実施し,現在解析中である. 関連因子については生化学的な実験を実施している.先行研究と同様にIL-15TGマウスでリン酸化AMPKの上昇が確認された.一方で,運動の効果は,確認されなかった.IL-15KOにおいても同様にAMPKの運動効果は確認されなかった.計画段階では,TGマウスで運動効果が確認されると仮説を立てていた.今回の結果については,詳細を検討していく.
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ予定通りに進捗していると考えている.仮説との違いについては,検討する必要があるため,現在詳細について生化学的な解析を進めている.基本的には,引き続き研究計画に沿って進めていく.
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Causes of Carryover |
前年度使用した分の支払請求が年度をまたいで来てしまい、次年度の請求となったため
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Research Products
(5 results)