2021 Fiscal Year Research-status Report
リンパ系を介した免疫・炎症増強による脳血管機能低下が虚血ペナンブラに及ぼす影響
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21K17486
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
前田 久 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, リサーチフェロー (80883545)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / ペナンブラ / 頚部リンパ節 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞は、我が国全体の医療費や要介護者の増加を押し上げている主要な原因の一つである。脳梗塞後に特徴的なものとして虚血ペナンブラが挙げられる。ペナンブラは正常組織と壊死組織の境界部に出現する虚血状態にある組織一帯を示す部位であるが、次第に壊死状態に陥り、脳梗塞後の脳壊死組織の拡大に関与していると考えられている。ペナンブラ発生の機序を解明し、その後の脳損傷拡大を最小限に抑える事ができれば、患者の障害予防やリハビリテーションに寄与すると考えられる。 頭部と頚部リンパ節はつながっており、その機能は脳梗塞後の過剰な炎症に関与し、脳損傷拡大に影響する事が示唆されている。しかし、脳梗塞後の脳血流動態に与える影響には不明点が多い。そこで、本研究では、実験動物であるラットを用いて、リンパ管機能とそれに基づく免疫応答が、脳梗塞後のペナンブラ、脳損傷および運動機能障害に与える影響について検討する事にした。 今年度は、初年度であるため、脳梗塞作製のために必要な条件を主に検討する事にした。具体的には使用するラットの大きさ、梗塞時間、頭蓋骨内血管に挿入する糸の直径、麻酔濃度等を検討した。さらにアウトカムとしての脳障害の評価法や運動機能を検討した。また、本研究の目的に合わせるため、典型的なtMCAOの方法を改善する事を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳梗塞モデルとして多用されているtMCAOをwistarラットに作製し、頚部リンパ節を切除した場合とそうでない場合の影響について脳損傷と運動機能、脳血流状態を指標として評価するものである。そのため、tMCAO作製のために必要な条件、具体的には使用するラットの大きさ、梗塞時間、頭蓋骨内血管に挿入する糸の直径、麻酔濃度等を検討した。さらに、従来のtMCAOでは、梗塞側の血流を止めてしまうプロトコルが用いられている。しかし、本研究では、脳梗塞後の血流状態を詳細に検討したいため、tMCAO後に血流を完全に近く回復させる必要がある。そこで、tMCAO後に血管を修復する方法を検討した。この検討に最も時間がかかったが、修復には各種接着剤や細い糸で縫合する事を検討し、結果的に縫合する方法が最も良い事が明らかとなった。また、運動機能評価には、Rotor Rodを検討し、最適な条件を検討した。頚部リンパ節の位置を確かめるために、脳室内にエバンスブルーを注入して位置を特定する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験に必要な基本的な実験手技等は初年度で獲得する事ができたので、今後は本格的なデータ取得を実施していく事にする。まずは脳梗塞を作製し、頚部リンパ節を切除しない群とそうでない群を比較して、脳梗塞の大きさ、運動機能障害の程度、脳循環の程度に影響が出るかどうか検討していく。
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Causes of Carryover |
実験進行具合により、来年度に購入する必需品のために次年度使用額が生じた。来年度の実験のために有効に活用する。
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