2021 Fiscal Year Research-status Report
Physiological mechanisms of orthostatic hypotension in individuals with stroke
Project/Area Number |
21K17489
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小宅 一彰 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (90803289)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 起立性低血圧 / 血圧 / 総末梢血管抵抗 / リハビリテーション / 脳血管障害 / 自律神経機能 / 心拍変動 / 圧迫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常成人や脳卒中患者における起立時の循環応答を理解する目的で、以下の3つの研究を実施した。 (1)ヘッドアップティルト試験とSit-up試験での血行動態の比較: 健常成人19名を対象に、電動傾斜ベッドを使用して受動的に起立するヘッドアップティルト試験と背臥位から端座位姿勢へ介助により姿勢変化するSit-up試験で試験中の血行動態を比較した。その結果、姿勢変化時の血圧、心拍数、1回拍出量の変化は試験間で異なることが示された。また、いずれの試験においても試験中の血圧変化は総末梢血管抵抗の変化と強く関連していることが示された。本研究の成果は、血圧に関する国際誌(Blood Pressure Monitoring)に掲載された。 (2)圧迫療法が起立時の自律神経機能に及ぼす影響:圧迫療法は起立性低血圧の予防に用いられてきた。本研究では、血圧や心拍数を制御する自律神経機能に圧迫療法が及ぼす影響を理解するため、これまでに健常若年女性12名を対象に実験を行った。中間解析の結果、圧迫療法を実施した条件では、圧迫療法を行わない条件に比べて、起立時の交感神経の興奮が少ないことが示された。本研究の成果は、第2回日本物理療法研究会学術大会で発表した。 (3)脳卒中患者におけるSit-up試験を用いた起立性低血圧の評価: 多施設共同研究により、Sit-up試験で脳卒中患者における起立性低血圧の有無を判別するカットオフ値を検討した。38名の脳卒中患者のうち、9名(23.7%)にヘッドアップティルト試験中に起立性低血圧を認めた。ROC解析の結果、Sit-up試験による起立性低血圧のカットオフ値は、収縮期血圧が-10 mmHg、拡張期血圧が-5 mmHgであることが示された。本研究の成果は、第59回日本リハビリテーション医学会学術集会に採択された。また論文を国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
健常成人や脳卒中患者における起立時の循環応答を理解する目的で実施した予備実験が、当初の計画以上に進展し、計画を前倒しして国際誌に論文を掲載することができた。また脳卒中患者における起立時の血圧調節機能にかかわる因子を探索する縦断的研究については、研究計画の立案を終え、倫理審査を受審中である。したがって、当初の計画通り、今年度から縦断的研究をスタートできる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
脳卒中患者における起立時の血圧調節機能にかかわる因子を探索する縦断的研究を開始する。研究計画は倫理委員会に提出済みであり、5月中には承認される予定である。実験にかかわる設備の準備や実施マニュアルの作成は完了しており、倫理委員会の承認後、ただちに研究を開始できる準備を整えている。研究全体では80名のデータ収集を行う予定であり、そのうち20名程度のデータを2022年度中に収集する計画である。計画通り、20名程度のデータが収集できた場合には、起立性低血圧の有無で血行動態・自律神経機能・体組成・その他基本的属性を比較する横断的解析を行う。また、横断的解析により起立性低血圧との関係が示された変数については、起立時血圧応答の縦断的な変化との関係についても解析する。 圧迫療法が起立時の自律神経機能に及ぼす影響を理解するための予備実験は2022年度も継続する。2021年度中は主に女性を対象に実験を行ってきたが、2022年度中は男性のデータも収集し、圧迫療法の効果について性差や体格の影響を解析する。本研究の成果から、起立性低血圧と同様に起立不耐症の一因となる体位性頻脈症候群の予防につながる基礎的な知見を得ることが期待できる。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも研究が進展し、英文校正費や論文掲載費として年度途中で今年度分の直接経費を使い切ってしまった。その後、論文を掲載するジャーナルからカラー出版費として119,860円の請求を受けたため、20万円の前倒し支払い請求を行った。しかしながら、出版は4月1日になったため、2021年度中にカラー出版費の支払いが生じなかった。こうした理由から、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、4月に論文が出版されたのちにカラー出版費として使用する。
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