2021 Fiscal Year Research-status Report
肩関節周囲炎の発症要因の究明ー肩関節位置覚と軟部組織の硬さに注目してー
Project/Area Number |
21K17502
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
矢澤 浩成 中部大学, 理学療法実習センター, 講師 (70610731)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肩関節位置覚 / 拘縮肩 / 筋硬度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、年代ごとの肩関節位置覚および肩関節周囲の軟部組織の硬さの測定を行い、加齢や生活習慣が肩関節位置覚と軟部組織の硬さにどのように影響するのかを検討することである。各年代における肩関節位置覚および軟部組織の硬さの違いを明らかにすることで、肩関節周囲炎(拘縮肩)発症の要因究明の一助になると考え、研究を進めている。 対象は、18~80歳の男女とし、青年群(18~39歳)、壮年群(40~59歳)、高年群(60~80歳)の3群にて分析を行う。 本測定に先立ち、特に注目している肩関節位置覚について青年群と高年群で事前測定を行い、異なる年代における肩関節位置覚の差異を確認した。本研究で使用する肩関節位置覚の測定方法はボディイメージを利用した方法で行うため、関節位置覚に問題があるのか、それともボディイメージに問題があるのかを判別することが出来る。今回の結果について、高年群では角度を低く見積もる傾向があり、高年群で肩関節位置覚が低下している傾向にあった。一方、測定の誤差(ばらつき)に大きな違いは認められず、ボディイメージの年代差はなかった。 次に肩関節周囲の軟部組織の硬さについては、筋硬度計を用いて測定した。青年群と高年群において明らかな年代差は認めなかったが、筋硬度計の精度や測定方法の規定について不十分であった可能性があった。今後は軟部組織の硬さの測定について、使用機器の再検討や測定方法の規定を十分に行う事が必要であると考えた。 以上より、今後は対象者数を増やし、信頼性の高い測定を行った上で統計学的分析にて年代差を検討する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
測定項目である肩関節位置覚測定、軟部組織の硬さ評価、腱板断裂の有無の確認、肩関節周囲筋筋力測定、肩関節可動域測定、生活習慣調査について、測定機器の準備および使用手順を確認し、さらにアンケート調査のための聴取項目の精選を行った。また対象および測定方法を決定した後に研究倫理審査委員会に申請を行った。 次に分析に必要なサンプルサイズを計算し、各群において30名が必要であることから、各群30名以上に対して対象者の募集を行っている。また、取り込み基準として、明らかな肩関節疾患の現病歴を有しないものとし、40歳以上で過去に拘縮肩の既往があるが、調査時に改善している場合は対象者として加えることとした。その場合、超音波診断装置にて腱板断裂の有無を確認し、必要な場合には医師の診断を勧めることとした。 測定順序として、対象者として募集が比較的行いやすい青年群と高年群の測定から行う事を計画している。若年群と高年群の測定については部分的に進めることが出来ている。 しかし、2021年度はコロナ禍により測定が困難であった。アルコール消毒やマスクの着用など感染予防を徹底して行う計画をしていたが、接触を伴う測定があるため測定を延期せざるを得ない場合が多くあった。特に高年群に関しては、感染拡大予防の観点から安全な測定会場の確保に難渋した。以上より、青年群と高年群において測定できた対象者についても全測定を終了できておらず、壮年群については対象者の募集も十分に行えていない。 2022年度は綿密な測定計画と適切な感染予防対策を行い、安全な測定環境を整備し、統計学的分析に必要な対象者数を確保できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍における感染予防対策については、引き続き徹底して測定を行う様にしていく。特に測定場所の換気や、測定のための接触前後の消毒には気を配っていくこととする。 対象者数の確保のため、青年群については本学学生に対して再度募集を行うこととする。また、高年群に関しては、担当している地域の健康増進サークル参加者から中心に募集を行っているが、必要に応じて地域の社会福祉協議会等に直接対象者の募集を働き掛けていきたいと考えている。壮年群に関しては、本学関係者および連携病院の関係者等に対して募集を行っていく予定である。 拘縮肩の好発年齢が40歳~59歳の壮年群の時期であるため、壮年群については同意が得られた対象者については肩関節位置覚と軟部組織の硬さの評価について、特に経時的変化を追っていきたいと考えている。可能であれば3か月程度の期間で随時経過を追っていきたい。また、今後の展望として、連携病院における拘縮肩症例の肩関節位置覚および軟部組織の柔軟性について調査が可能であるのかを関係者と相談し、本研究結果が拘縮肩発症のメカニズム解明についての共同研究としての基盤的成果が挙げられるよう調査を進めて行きたい。 本研究の研究結果について、統計学的検討に十分な対象者数を確保し、本年度には3群間の肩関節位置覚、肩関節周囲の軟部組織の柔軟性、生活習慣を中心とした比較検討を行い、その結果について学会発表等で公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
購入機器について、予算額より低価にて購入が可能であったため次年度使用額が生じた。また、コロナ禍により、測定が十分に行えなかったため、測定に必要な消耗品の購入が少ない状態であったことが次年度使用額が生じた理由である。 次年度において、測定数は増加する予定であるため、購入予定であった測定時に必要な消耗品に使用を計画している。
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