2022 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋性疼痛に対するミラーセラピーを用いた新たな治療戦略開発のための実験的研究
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21K17530
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森内 剛史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (40814124)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋性疼痛 / ミラーセラピー / 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 / 高張食塩水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,急性痛患者における中枢神経系に対するリハビリテーション介入の開発に向けた橋渡し研究として,実験的な急性痛状態にある健常成人を対象に,ミラーセラピー(以下MT)による効果を皮質脊髄路の興奮性や主観的な痛みの程度を指標に検証することである.今年度前半では,前年度から継続している予備実験を行い,昨年度実施した予備実験で課題となったMTの課題動作で用いる手指の動きと,経頭蓋磁気刺激のトリガーのタイミングを統制するために新たに導入した赤外線センサーのシステムの確認ならびに実験プロトコルを確立させ,本実験を開始した.事前に先行研究をもとに本研究に必要なサンプルサイズを算出し16名の対象者が必要であることを確認し,合計16名の被験者をMTを実施する群と実施しない対照群の二群に無作為に振り分けて,皮質脊髄路の興奮性に関する神経生理学的データならびに痛みに関する主観的なデータを取得し比較検討を行った. 被験者16名のうち,1名が実験途中に離脱したため,最終的にはMT群7名,対照群8名の合計15名が解析対象となった.先行研究において,高張食塩水を筋注することにより,その筋に対応する皮質脊髄路の興奮性が有意に低下する報告も認められるが,本研究の対照群では安静時と比較して低下している傾向にあるものの,有意差までは認められなかった.群間での比較においては,MT群が対照群と比較して,MTを実施している期間ならびに実施後の安静状態の期間において,皮質脊髄路の興奮性に有意差が認められた.痛みの主観的評価においても,MT群の方が対照群と比較し,痛みの程度が小さく,有意に痛みが完全に消失するまでの時間を短縮することができた.以上の結果より,急性痛に対するMTは皮質脊髄路の興奮性低下の予防や痛みそのものに対しても効果がある可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により,特に前半の期間は被験者の確保が十分にできず,実施できなかったことが挙げられる.当初は次年度の介入研究に向けた準備にも取り掛かる予定であったが,年度末まで実験が続いたために,当初の予定よりも遅れた結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,今年度実施した研究結果を踏まえ学会発表や論文執筆を行うと同時に,実際に急性痛を呈する患者さんに対するミラーセラピーの効果を検証するための本格的な無作為化比較試験のためのパイロットスタディとして所属研究室の社会人大学院生の所属する医療機関と連携しながら臨床データ取得を収集する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により,予定より実験が遅れてしまったことや,本来参加する予定だった学会に参加できなくなったり,本来使用するはずであった旅費,論文執筆に関連する予算を使用することができなかった.次年度の助成額と合わせ,今年度分の遅れを取り戻すべく研究を推進していくとともに,次年度に繰り越した経費については,成果報告等の旅費等に充てる予定である.
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