2023 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋性疼痛に対するミラーセラピーを用いた新たな治療戦略開発のための実験的研究
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21K17530
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森内 剛史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (40814124)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋性疼痛 / ミラーセラピー / 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 / 高張食塩水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,急性痛患者における中枢神経系に対するリハビリテーション介入の開発に向けた橋渡し研究として,実験的な急性痛状態にある健常成人を対象に,ミラーセラピー(以下MT)による効果を皮質脊髄路の興奮性や主観的な痛みの程度を指標に検証することを目的としている.本年度は,昨年度実施した神経生理学的実験の結果を踏まえ,データ解析,論文執筆ならびに投稿,追加実験を中心に実施した. 対象は高張食塩水を筋注した後からMTを実施する群(MT群)7名と,対照群8名の合計15名とした.実験的な痛みは,無菌の高張食塩水(5.8%Nacl,0.2 ml)を右手の第一背側骨間筋に27Gの注射針を用いて注入し誘発した.MT群はミラーボックスの中に立てられた鏡に左側の手を映し,左示指内外転反復運動を1Hzのリズムで240秒間実施してもらい,その動きを観察し,右手で動いているような運動錯覚を引き起こす介入を実施した.皮質脊髄路の興奮性評価には経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(MEP)の振幅の値を指標として用い,両群とも高張食塩水注入後から780秒後まで10秒間隔で刺激しMEPを導出した.痛みの評価には,0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとして、 0~10までの11段階に分けて、現在の痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールであるNumerical Rating Scale(NRS)を用い,高張食塩水注入後から30 秒ごとに口頭にて痛みの程度を評価した. その結果,皮質脊髄路の興奮性を反映したMEP振幅の値は,MT群がMTの介入中ならび介入後も対照群と比較して有意に高値を示した.また痛みに関しても,痛みが誘発され完全に消失するまでの時間を比較検討し,MT群の方が有意に短縮したことが明らかとなった. なお,本研究の結果をまとめたものは,本年度Brain Sciences誌に掲載された.
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