2021 Fiscal Year Research-status Report
末梢神経損傷後の神経修復と機能回復の分子基盤解析及びその病態マーカーの探索
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21K17539
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
草川 裕也 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (40756392)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 末梢神経 / 骨形成タンパク質 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、挫滅末梢神経組織に発現する骨形成タンパク質(BMP-4)とそのアンタゴニスト(Noggin)が末梢神経修復と身体機能回復に及ぼす影響および神経損傷後の運動負荷がそれらの産生と身体機能回復に及ぼす影響を解析するとともに、末梢神経組織の修復、運動療法の治療効果を反映する病態マーカーを探索し、臨床への応用を目指す。 今年度は、7週齢ラットの右正中神経を鉗子で挟んで挫滅させた、正中神経挫滅モデルラットを作成し、神経修復過程におけるシュワン細胞の増殖・分化と患部でのBMP-4およびNogginの発現分布を免疫組織化学染色により評価した。観察の結果、挫滅神経組織におけるBMP-4およびNogginの発現と神経修復の過程におけるそれらの発現分布の変化が認められ、BMP-4の発現増加は挫滅後早期に、Nogginの発現増加は挫滅後1カ月程度経過してから確認された。この発現量の変化については、今後定量的に評価する予定である。 また、正中神経挫滅モデルラットに、1日30分、餌への前肢リーチ把握運動を実施し、運動負荷が身体機能回復に及ぼす影響を握力測定と触覚検査にて評価した。結果、運動負荷を加えることで、触覚を主とした機能回復が促進された。さらに、運動負荷が神経修復過程におけるシュワン細胞の増殖・分化と患部でのBMP-4およびNogginの発現分布に及ぼす影響を免疫組織化学染色にて評価した。今後、BMP-4およびNogginの発現量の変化を定量的に評価し、運動実施群と非実施群について、患部でのBMP-4とNogginの発現動態を比較して、運動負荷が与える損傷末梢神経の組織修復への影響と機能回復の分子基盤を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属施設での研究を円滑に進めるための環境整備に時間を要し、上半期は予定通りに進めることができなかった。下半期より、神経挫滅モデルを用いて神経修復過程におけるシュワン細胞の増殖・分化と患部でのBMP-4およびNogginの発現分布、餌への前肢リーチ把握運動による運動負荷が身体機能回復やそれらの発現分布に及ぼす影響の解析を進めた。挫滅神経組織にBMP-4とNogginが発現、神経修復の過程においてそれらの発現分布は変化した。また、運動負荷を加えることで、触覚を主とした機能回復の促進が認められた。さらに、運動負荷によりBMP-4およびNogginの発現分布に変化が認められた。一方で、BMP-4およびNoggin産生について定量解析が実施できていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
神経挫滅モデルにて、神経組織修復過程におけるシュワン細胞の増殖・分化、患部でのBMP-4とNogginの発現動態、機能回復の連関およびそれらに対して運動負荷が及ぼす影響の解析を進めている。免疫組織化学染色にて挫滅神経組織におけるBMP-4およびNogginの発現分布については解析できているが、定量解析が実施できていないため、神経修復の過程におけるBMP-4およびNogginの産生について定量的に評価する。また、餌への前肢リーチ把握運動による運動負荷によって触覚を主とした身体機能の回復が促進されることを確認したが、BMP-4およびNogginの発現動態への影響について解析できていないため、運動実施群と非実施群の結果を比較し、その解析を行う。これらの結果に合わせ、今後は、運動実施群、非実施群について、経時的に血中BMP-4およびNoggin濃度を測定し、神経組織修復と身体機能回復の程度、血中濃度の変化を比較することによって、それらがリハビリテーションを至適化することができる病態マーカーとなり得るかを検討する。
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Causes of Carryover |
所属施設内の研究環境整備に時間を要したため、今年度上半期は予定通りに計画を進めることができなかった。下半期より、免疫組織化学染色にて標的タンパク質の発現分布の解析を実施したが、定量解析までは実施できていないため、次年度使用額が生じた。次年度早期に、今年度実施できなかった標的タンパク質の定量解析を予定しているため、実験で使用する消耗品の購入時にそれらを使用する予定である。
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