2022 Fiscal Year Research-status Report
末梢神経損傷後の神経修復と機能回復の分子基盤解析及びその病態マーカーの探索
Project/Area Number |
21K17539
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
草川 裕也 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (40756392)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 末梢神経 / リハビリテーション / SCG-10 / NfL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、挫滅末梢神経組織に発現する骨形成タンパク質(BMP-4)とそのアンタゴニスト(Noggin)が末梢神経修復と身体機能回復に及ぼす影響および神経損傷後の運動負荷がそれらの産生と身体機能回復に及ぼす影響を明らかにすることである。しかし、研究を進めていく中で、BMP-4、Nogginよりも末梢神経修復や身体機能回復に影響を及ぼす可能性が高いタンパク質を発見したため、今年度途中より、神経細胞の軸索再生に関与するタンパク質、SCG-10に対象を変更して研究を進めた。また、本研究での利用から、臨床現場への応用を検討している、末梢神経組織の修復、運動療法の治療効果を反映する病態マーカーとしては、これまで候補としていたBMP-4やNogginは血中濃度が低いため不向きであると判断し、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)に候補を変更して研究を進めた。 まず、今年度は、正中神経挫滅モデルラットの神経修復過程におけるSCG-10発現量の変化と、NfLの血中濃度変化を、餌への前肢リーチ把握運動実施群と非実施群で比較、評価した。スクリーニング評価として実施したDNAマイクロアレイ分析では、受傷後早期において、運動実施群のSCG-10発現量が増加した。また、ウエスタンブロッティングにおいても、受傷後早期はSCG-10の発現量が多く、運動実施群は非実施群に比べて発現量が多かった。NfLの血中濃度については、受傷後24時間以降から1週間程度減少するという傾向や運動実施群と非実施群の経時的変化の違いが認められた。今後、同様の解析を進め、統計学的分析を実施する予定である。 加えて、今後は、挫滅神経組織におけるSCG-10の発現分布と神経修復の過程におけるそれらの発現分布の変化について免疫組織化学染色により評価し、運動負荷が与える損傷末梢神経の組織修復への影響とその分子メカニズムについて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析対象となる組織が小さく、微量であるため、DNAマイクロアレイ分析や定量解析のサンプル作成に時間を要し、上半期は予定通りに進めることができなかった。また、DNAマイクロアレイ分析の結果を踏まえ、研究対象とするタンパク質の再検討を実施したため、実験が遅れた。下半期より、神経修復過程におけるSCG-10発現量の変化と、NfLの血中濃度変化の評価、餌への前肢リーチ把握運動実施群と非実施群における比較を進めた。結果、受傷後早期はSCG-10の発現量が多く、運動実施群は非実施群に比べて発現量が多いことを明らかにした。また、NfLの血中濃度については、受傷後24時間以降から1週間程度減少するという傾向や運動実施群と非実施群の経時的変化の違いが認められた。一方で、挫滅神経組織におけるSCG-10の発現分布と神経修復の過程におけるそれらの発現分布の変化について評価できていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
神経挫滅モデルにて、神経組織修復過程における軸索の成長と患部でのSCG-10の発現動態、機能回復の連関およびそれらに対して運動負荷が及ぼす影響の解析を進めている。神経修復過程におけるSCG-10発現量について定量解析を進めているが、免疫組織化学染色による発現分布の解析ができていないため、運動実施群と非実施群の比較と合わせて評価を実施する。それらの結果を統合し、運動負荷が与える損傷末梢神経の組織修復への影響と機能回復の分子基盤を検討する。 また、運動実施群、非実施群について、経時的に血中NfL濃度を測定し、神経組織修復と身体機能回復の程度、血中濃度の変化を比較することによって、それらがリハビリテーションを至適化することができる病態マーカーとなり得るかを検討する。
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Causes of Carryover |
研究対象とするタンパク質を変更したため、今年度上半期は予定通りに計画を進めることができなかった。下半期より、標的タンパク質の発現量の解析を実施したが、免疫組織化学染色による発現分布の解析までは実施できていないため、次年度使用額が生じた。次年度早期に、今年度実施できなかった標的タンパク質の発現分布の解析を予定しているため、実験で使用する消耗品の購入時にそれらを使用する予定である。
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