2021 Fiscal Year Research-status Report
運動による神経血管ユニットのリモデリングが神経新生の促進をもたらすメカニズム
Project/Area Number |
21K17547
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
征矢 茉莉子 九州大学, 医学研究院, 助教 (80830562)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成体海馬神経新生 / 神経血管ユニット / ペリサイト / PDGFRβ / 輪回し運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の海馬歯状回において、生涯を通じてニューロンが産生され続ける現象は成体海馬神経新生と呼ばれている。多くの先行研究によって、成体海馬神経新生は認知・情動機能の制御基盤の一つであり、様々な要因によって抑制もしくは促進されることが示されている。運動は神経新生を促進することが示唆されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。近年、運動によって神経血管ユニット(神経細胞、血管内皮細胞、ペリサイト等からなる血管の基本単位)の遺伝子発現のリモデリングが起こることや、神経血管ユニットを構成するペリサイトに発現するPDGFR-βを介したシグナル伝達が神経新生に関与するとの報告があり、運動が神経新生を高める作用機序として、我々はペリサイトに着目した研究に取り組んでいる。Pdgfrb+/- マウスを用いて4週間の輪回し運動効果を検証したところ、神経新生はWTマウスとの間に有意な差は見られなかった。行動学的な解析として、オープンフィールド試験、Y字迷路試験、高架式十字迷路試験、強制水泳試験、ソーシャルインタラクション試験を課したが、顕著な差は見られなかった。これまで、ペリサイトの機能を明らかにする研究の多くは、脳内の血管や神経細胞へ大きな影響を及ぼす脳虚血や脳梗塞などのモデルを用いたものであり、自発的な運動モデルである輪回し運動の効果を検出できていない可能性がある。したがって、まず、脳虚血とは異なるストレス負荷モデルを用いてペリサイト機能異常がどのような影響を及ぼすかどうかを明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、Pdgfrb+/- マウスを用いて4週間の輪回し運動効果を検討したが、WTとの間に有意な差は認められなかった。ペリサイトは虚血・低灌流や脳傷害に対して脆弱性が高いことや、代謝異常や過度なストレスもペリサイトに大きな影響を及ぼすことが知られている。そこで、慢性的なストレスがPdgfrb+/- マウスにおける神経新生に及ぼす影響や、それに対する運動効果を検討する。ストレスモデルは、代表的な拘束ストレスと、うつ病モデルの一つとして近年注目されているChronic unpredictable mild stress (CUMS)を用いる予定である。現在、C57/BL6マウスを用いてCUMSモデルの確立を行っており、うつ様行動が誘導されることを確認した。神経新生をはじめとした神経血管ユニットへの影響や、グリア細胞への影響を免疫染色により解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、拘束ストレスやCUMSによる慢性的なストレス負荷がPdgfrb+/- マウスの成体海馬神経新生に及ぼす効果を検討し、その後、運動実験へと発展させる。また、ペリサイト機能障害は加齢の影響も受けることから、高齢 Pdgfrb+/- マウスにおける成体海馬神経新生の検討も計画している。ストレスの影響が見られない場合は、高齢 Pdgfrb+/- マウスにおける成体海馬神経新生への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、動物実験を実施する。経費の内訳としては、動物実験に必要な物品や消耗品等の購入、本研究を遂行するにあたり必要となる技術職員の人件費および謝金や、本研究により得られた知見を学会等で発表する際に必要な旅費等に充てる。
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