2023 Fiscal Year Research-status Report
ボール落下点推定法による卓球競技のリアルタイムゲーム分析・評価システムの開発
Project/Area Number |
21K17573
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Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
上島 慶 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (70751824)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 卓球 / ボール落下点 / インパクト位置 / 推定 / 振動分析 / マイクロフォン / デプスカメラ / リアルタイム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,卓球ボールの落下点を「映像分析」と「振動分析」から推定し,推定された落下点から打球コースやボールスピード,ボールの回転種・回転数などの卓球競技の戦術的要素をリアルタイムで分析・評価できるシステムを開発することである. 当初の計画では,2021年度と2022年度の2年間で卓球台にボールが落下した際の振動と映像分析を用いて,卓球ボールの落下点を推定する方法を確立する予定であった.しかし,映像分析では,施設の照明やボール以外の物体が映像に映り込むとボール落下点の推定が困難になる,AEセンサを用いた振動分析による推定は,卓球台の不均一性から一部の領域において推定誤差が大きくなるといった課題があげられた.そこで,空気を介して振動を計測できるマイクロフォンを用いてボール落下点の推定を試みた結果,卓球台半面を使用した検証では,比較的高精度で3次元的にボール落下点を推定できること,ラケットとボールのインパクト位置も平均10cmから20cmの範囲で推定できることが示された.また,マイクロフォンに加えて,デプスカメラを用いることにより,ボールの軌跡や選手の移動軌跡も復元できる可能性も明らかになった. 2023年度は,より実践的な状況下を想定し,卓球台全面におけるボール落下点をリアルタイムで推定できるか検証した.検証の結果,自由落下および左右クロスのラリーにおいては10cm以内の距離誤差(最大11.5cm)でボール落下点を推定できるようになった.また,ボールとラケットのインパクト位置の推定誤差は20cm前後(最大53.5cm)であった.これらの処理時間は,約0.4秒で推定できることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では,2022年度までにAEセンサを用いた「振動分析」と高速ビデオカメラ1台用いた「映像分析」の手法でボール落下点を推定する方法論を確立する予定であったが,「映像分析」では,施設の照明やボール以外の物体が映像に映り込むことにより推定誤差が大きくなる問題やAEセンサを用いた「振動分析」では,卓球台の不均一性から卓球台のすべての領域でボール落下点を推定することは困難であることが分かった.そのため,計測用具を変更し,マイクロフォンとデプスカメラを用いたボール落下点の推定を試みている.この方法論を用いることにより,当初計画していた手法と同程度の精度で推定できることに加えて,ボールとラケットが衝突するインパクト位置も推定できることが明らかになった.しかし,卓球競技の戦術的要素をリアルタイムで分析・評価できるシステムを開発するためには,推定精度を高めることやリアルタイムで処理する上で誤検出を改善するためのプログラム改良などの課題からまだ時間を要することが想定されるため,当初の研究計画より遅れている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初は,4年計画(2021-2024年)であったが,2024年度は産前産後・育児休暇取得のため,計画を一年延長し,研究再開後は以下の内容に取り組んでいく. マイクロフォンとデプスカメラを用いた方法は,卓球台全面の左右クロスを使用したラリーにおいて推定誤差10cm以内と高い精度でボール落下点を推定できるようになった.また,インパクト位置は距離誤差20cm前後で推定できるようになった.しかし,インパクト位置の推定では,30cm以上の誤推定が2カ所(距離誤差34.6cm,53.5cm)あり,この誤差を改善するために,打球位置を検出する撮影状況の改善を行う.また,推定誤差は,マイクロフォンを設置する高さによって大きくなることがシミュレーションによって明らかになっているため,ボール落下点とインパクト位置を安定して正確に推定でき,なおかつ選手の競技を妨げないことを条件にしたマイクロフォンの設置位置を検討していく.さらに,リアルタイム処理においては,ボール位置の未検出や誤検出の発生,声援や選手の移動音などの打球音以外の環境音への対処などが課題としてあげられており,フィルタ処理を外部機器の接続によってアナログ処理に変更することやCPUの高性能化によってこれらの課題解決を試みる.
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Causes of Carryover |
当初の計画では,卓球競技の戦術的要素をリアルタイムで分析・評価できるプログラムの作成と国際会議での発表を予定していたが,ボール落下点の推定結果からプログラムの作成までに至らなかったことと,国際会議が開催されなかったため次年度使用額が生じた.繰越額と翌年度分は,国際会議と外国人研究者招聘のための旅費に使用する.
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