2022 Fiscal Year Research-status Report
暑熱下運動時における循環動態制御メカニズムの解明とその応用基盤の構築
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21K17582
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡邊 和仁 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (70733145)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 暑熱ストレス / 心機能 / 循環反応 / 体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は暑熱ストレスに対する循環応答と心機能変化がどのようなメカニズムで生じるかのを明らかにするため、心臓の壁運動や脱水(体液変化)の影響に着目した検討を行った。実験では、前年度と同様に温水を循環させたスーツ(水循環スーツ)を用いて長時間(2.5~3時間)の局所(片脚、両脚)または全身の温熱負荷を行った。この時の循環パラメーター(心拍出量、下肢血流量等)、体液パラメーター(血液量、血漿量)、体温パラメーター(深部体温、皮膚温)を測定するとともに、実験中に記録した心エコー画像を用いて心臓の壁運動の解析(Speckle tracking)を行い、左室捻転運動(Twist:左室収縮性と関連)及び捻転からの戻り運動(Untwisting rate:左室拡張性と関連)を評価し、これらのデータを条件間で比較した。左室Twistは、片脚加温及び両脚加温時には温熱負荷を行わない条件(コントロール)との差はみられなかったが、全身加温時には加温1時間以降において他の条件より高い値を示した。左室Untwisting rateも片脚加温及び両脚加温時にはコントロールとの差はみられず、全身加温1時間以降において他の条件より高い値を示した。これらの心機能指標と同様に、血液量は片脚加温及び両脚加温時にはコントロールとの差はなく、全身加温1時間以降において他の条件より低い値を示し、血漿量の変化も血液量変化と同様のパターンを示した。これらの結果から、全身性の温熱負荷は心臓の壁運動に影響を及ぼし、左心室の収縮性及び拡張性の亢進を引き起こすが、局所的な温熱負荷は心機能に大きな影響を及ぼさないことが示唆された。また、全身加温により生じる左室収縮性及び拡張性の亢進は血液量及び血漿量の減少に伴って生じるものである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から大幅な変更なく概ね順調に研究を進めることができ、次年度に繋がる実験結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は暑熱ストレスに対する心機能変化についてさらに詳細に明らかにするために、流体力学的な観点から血液の運動エネルギーの変化を検討するとともに、呼吸応答との関連も調べる予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、投稿を予定していた筆頭論文1編について共同研究者との協議により追加の解析を行いデータをより強化してから投稿することにしたため、論文の投稿や掲載に係る支出が無かった。また、国内外の共同研究者との打ち合わせも直接会って行うのではなく、メールやWeb会議システム等で対応することが多くなり、旅費や印刷費等の支出が少額となった。今回生じた次年度使用額は、2023年度において論文発表のための経費(論文掲載費)やデータ解析の加速化を目的としたワークステーション導入のための経費として使用することを予定している。
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